3-4.おってきた仲間

「ユーリー様。もう何言っても無駄ですからね」


「そうそう。こうなったら一緒にいくって事だから」


 二人のにこやかな笑みはユーリーにとって太陽のように暖かだった。


「――ありがとう。二人とも」


「お礼を言うのはまだ早いですわ。これからすることは言わば……逆賊ですわ」


 マリは皆が目を背けていた事実を突いた。


「そういえば、マリ、あなたって馬に乗れたのね」


「ええ。ユーリー様が乗れることを以前に知りまして。

 それから時間があるときはレンに頼んで教えてもらっていたのです」


「へぇそうだったの……今後のことも含めて、場所を移して話さない?」


 ユーリーがそういったのは、通行人が足を止めて、

 ジロジロとこちらをうかがっていたからだ。


 馬を止めてこんな所で立ち話している人が注目を浴びてしまうのは道理だった。

「そうですわね」

 ユーリーたちはいそいそと宿探しを始めた。

 ✝ ✝ ✝


 暗く、豪華な一室で低い声が響き渡る。

 この部屋の中にはシャンデリアがある。

 部屋の壁すべてに金色に縁取られた鏡が立てかけられている。

 その部屋の真ん中にいすがあった。もちろん金でふちどられている。

 そのいすに座っている男がいた。


「ついに動き出したか。だが、水神を目覚めさせるわけにはいかないのだ。

 まだ準備が出来ていない」


 年のころは二十代前半の男は葉巻きに火をつけ、考える仕草をしていた。

 豪華な椅子に座り、傲然としている様子は画家に描かせたいほど優雅だ。


 男の葉巻の煙が部屋に充満した頃、扉を開けたらしい古めかしい音がした。

 暗い部屋にはそぐわないほどの美女が立っていた。髪は腰まである。


「人使いが粗いつーの。……で、わざわざ呼びつけた理由はなんなわけ?」


「次の依頼だ。座るがいい」


 座ることを促したにもかかわらずこの部屋には

 男が座っているいすひとつしかない。彼女は床に腰を下ろした。


 彼女は口汚いが、腕は確かで、依頼された仕事は断らない。

 たとえ恋愛相談から人を葬る依頼まで顔色一つ変えることなく、

 完璧にこなす現実主義者だ。


 そんな信条を掲げている者らしく近寄りがたい厳格な雰囲気を纏っている。


 きりりとした目許や釣り合いのとれた高い鼻。

 血を連想させるほどの紅い唇はそばかすひとつない頬によく似合っていた。


 長身と腰まで来る長い金色の髪には大胆な服のデザインがよく似合う。

 近寄りがたいのにいつの間にか目で追っているのほどの


 文句のつけようのない美女。


 だから宰相を始めとしてこの女には甘いのだ。

 しかも容姿だけではなく頭も切れる。宰相という高い地位に並ぶほどには。


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