中編スタート

お給金を得る

夕日が沈みかけ、橙色から闇に変わろうとする時刻になった。

ようやく、終了の合図であるベルが鳴り響いた。


「はい、お疲れ様。お給金千四百ルピーだよ」


突き出された麻袋を開けたユーリーは驚いた。


「こんなに、いいのですか……広告の倍はあるんじゃないですか」


「いいのじゃよ。あんた等は三人で申し込んだから倍になっただけじゃ。

それに志願者がいないから

こんなに高くなったんじゃしな――明日も来てくれるかい?」


「はい。喜んで」


『ちょっといいの? 勝手に決めちゃって』


「何言っているのよ。こんな稼ぎのいいところ、なかなかないんだから」


もっとも他の二人はクタクタで思考回路は使いものにならなかったのだが……

その後二日にわたり、

農作業をして一人四二〇〇ルピーという十分な路銀を手に入れた。

二日働くとはいえマリは疲労が激しく、

見ているだけだったアマリリスでさえ可哀想と思うくらいだった。


「本当に行くのかい? ここで働いてくれてもいいのに」


「そんな。給金の割に働けていないのに。

ところで政府について何か思うところはありませんか?」


三十人ほどいる女たちは顔を見合わせた。


「そうさねぇ。女が働くには制約があるから。それがなければどんなにいいか」


「そうよね。もう少し自由にしてくれてもいいと思うわ」


彼女らの声を書き綴り、ユーリーは賃仕事場を後にした。

馬を預けておいた宿に礼を言いユーリーはさっぱりした様子だ。


「これで安心して旅を続けられるわ」


マリと連の二人はやっと地獄から解放されて精彩が戻ってきた。


『じゃ、気を取り直して、目的地はここから南に三里ほど離れた湖ね』


ユーリーはアマリリスの言葉を二人に伝えた。


「了解しましたわ。参りましょう」


「おう。さっさと出発しようぜ」


あれから何もいわずに着いて来てくれる仲間がいてくれて心強かった。

出立は明朝だ。

「夜も遅いし、朝も早いわ。野宿しましょう」

二人は同意したのだった。


✝ ✝ ✝


男が依頼して幾日かたった日のことである。


「おい。あの希望の少女はまだか」

闇に問いかけるとすぐに返事がくる。

依頼屋の見習いは標的に付いているため、依頼屋が情報のやり取りをしている。


「今しばらくお待ちくださいますように。標的はもうすぐ神に会いましょう。

全て私にお任せくださればすぐに叶いましょう。とのことです」


男は、クツクツと笑った。


「何にせよ、早く合間見えたいものだな」


闇に潜んでいた依頼屋は頭をさげ、通常の言葉使いに戻る。


「もしも、見習いが失敗したらどう処罰をくだすつもり?」


「言い出したのはそっちだろう。いざとなったら、

お前が始末をつけろ。それにどんなことが起こっても支障はないさ。下がれ」


轟然と言い放ち、依頼屋も下がらせた。


その直後、トントンと扉が震える。


「陛下、ここにいらっしゃるのですか?

宰相と王太后が申したいことがあるとか。

早急に謁見の間にいらしてください」


聞こえてきたのは下僕の者の声だった。


「――わかった。今行こう」


そして暗い部屋には誰も居なくなった。



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