神の成り立ち

✝ ✝ ✝


ずっと笑っていたのにどこからか私を呼ぶ声がする。


『――リー、ユーリー、起きて』


アマリリリスの声だとわかるが眼を開けるのが億劫だった。


(まだ眠いのになによ)

声を無視しようと思ったらまだ痛む右肩に軽い衝撃が来た。


「――っ」

痛みを感じて反射的に瞼を上げれば、アマリリスが片足をあげて、

蹴ったあとの体制になっていた。

ユーリーは妖精に蹴られたとわかると文句をいった。


「痛いっわね! なんで蹴るの。まだ朝にもなっていないじゃない。

それに、それにさっきまで夢の内容忘れちゃったじゃないの!」


「蹴ったのは悪かったと思うけど一緒に朝日が見たいと思って。良いでしょ?」


ウルウルと綺麗な瞳で見つめてくるも、

再び睡魔に襲われ始めたユーリーはつれない。


「景色よりも欲求が優先。というわけでお休み」


マリが起きると困るので、ユーリーは小声で返答した。


『そんなこと言わないでよ。綺麗よ? とっても』


「うるさいな~」


それでもせがんで来るアマリリスにユーリーは折れた。


幸い、マリはぐっすりと眠っていることだし、

なかなか聞けなかったことをアマリリスにぶつけてみることにした。


「神様って、三神しか存在しないって本当なの?」


「――本当よ。水の神・フローラ、霧の神・アイリー、そして全能の神・ラー」


 幼いころに与えられた絵本でそんな題材があったような気がする。


「確か、この国では、水と霧の災害が多かったことから、

その二神は特別に信仰された。

その水と霧の神の暴走しないために見張りとして全能の神が存在する……だったけ」


「大体は合っているけれど、全能の神の役割は厳密には間違いがあるわね」


 ――元々、この世界には数多の神が存在した。

年月が経つ内に、徐々に信仰される神の序列が決まっていった。


 災害の多かった水と霧が圧倒的に祭られたことは言うまでもなかった。

それ以外の神は二つの神と対等になることを求めた。

だがその願いは叶わず、神たちは人間に束ねられ、

『全能の神』として括られてしまったのだ。


 世界の理はそれを境に変わり始めた。神が少なく、

限られたせいで、天変地異が起こる。


元々、人間が付けた総称であるからラーと言っても全土の把握はする気はなかった。


皇帝が民衆を支配し、奴隷が生まれる。


 人々は希望を求め、やがて……現状を覆す為に予言がうまれた。


「それが妖精の世界に伝わっている伝説よ」


「そうだったんだ。じゃあ、全能の神って言っても水と霧は専門外ってこと」

 アマリリスは大きく頷いた。


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