神通力は人を救うが同時に世界を掻き乱す  著:梅しば

 「癒しのチカラ」で患者を救う連中の"裏"アクションストーリー



 ここから感想。


 

 キャッチコピーにもある通り「癒しのチカラ」が使える不思議な一族が住む村が舞台。まあ、内容を読み進めていくと「癒しのチカラ」とは名ばかりで相当万能な能力、といったイメージである。

 この万能の力――神通力を使える主人公サイドと、使えない一般人の悪者、というのがこの作品の対比構造となっている。もちろん、これは非常に簡単にしたものだ。

 


 私が読んだのは第一章まで。エンドロールも流れていたので誘拐編は第一章でとりあえず完結した、ということだろう。

 というわけで第一章の感想を書いていく。

 

 ここからネタバレ含む。



 さて、まずはこの作品を読んでいて一番印象に残った点から語っていこう。

 ネタバレ含む、なんて前置きをしてこんなことを言うと、内容に関わることを話す、と思われるだろうが違う。


 この作品のもっとも良い点は内容ではない(もちろん内容が悪いと言っているわけではない)。

 レビューでも書かれている通り、この作品の良さはその読みやすさにある。

 一話、五千文字程度と相当なボリュームでありながら、それを感じさせないテンポ感。


 何よりも見せたいセリフや病者への誘導がうまい。

 果たして、神の媒体となったとき、あれが許されるのかは分からないが、非常に意味のある改行が使われている。




 ――例えばこんな風に。





 いや、これはあまりうまく表せてはいないかもしれない。

 けれど、この作品に大きな改行があるのは確かだ。文と文の間を開けるための改行ではなく、明らかに目立たせるためだけの大きな改行。

 後半にある、「相方が死んだと、主人公が勘違いするシーン」、個々の改行が特に良かった。


 主人公の焦燥感と、おそらく目立たせたかったであろう「ペイント弾」。

 ここのシーンは読者への見せ方が非常にうまかった。 

 思わず参考にしたい、と読み返したくらいだ。



 さて、最後に内容の方へ話題を移そうか。

 能力者VS一般人、というのがこの作品の大きな構図、というのは上で書いたとおりだ。そして、こういうのは基本的には能力者側に知識がなく、一般人側に知能がある。

 つまり、力と知能でバランスがとれるようになっているわけだ。

 ここまではこの作品も王道を無視していない。では、この作品はどこが違うか。




 スポットライトが当てられているのが能力者側である、という点だ。




 どうだろうか。また改行を使ってみたのだが。

 こういう能力者VS一般人の構図を取る作品は、「どうやって強い能力者を倒すのか」という点に読者はワクワクするものだ(と、私は勝手に思っている)。たとえば序盤のほうの『僕のヒーローアカデミア』などもそうだ。主人公は一般人ではないが、能力をうまく使えない、というハンデを背負っている。

 それなのに、様々な敵に打ち勝っていく。そこに感動するものである。

 


 というよくある王道を、逆にしたこの作品だが読んでみると案外面白い。

 素人側、というものがそこまで描写されていなかったからなのか、はたまた知識のある一般人側にもきちんと視点主を用意しているからなのかは分からないが、楽しく読むことが出来た。

 web小説ならではの点も生かした良い作品だと思う。


 さて、こんなものだろうか。

 それでは。



作品URL:https://kakuyomu.jp/works/1177354054898591921

作者URL:https://kakuyomu.jp/users/umeshiba

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