人生の意味と幸福、大禍日々のキセキ 著:長久 後編
えー、あまりにも漢字について奴が長すぎたので、内容の感想はこちらに。
基本的に、読みながら書いていき、最後に総括するスタイルをとっているので、ご容赦を。
序盤は幸福とは何か、という哲学的なメッセージへの問題提起部分。
医療系、リハビリテーションというと介護系だろうか。
あまり詳しくはないので、見当違いなことを言っていたらすまない。
まず、最初に印象に残ったシーンは、「遺族の骨を折ること」について語る箇所。
仕方ないことだが、一見狂気を孕んだ骨を折るという行為。
これについて葛藤する、という心理が非常に共感できた。
中盤は、主人公が周囲の環境に耐えられず、どんどんと病んでいくシーン。
かなりの分量を使って描写していて、主人公が病む、ということを疑問視させたくない、という意思を感じた。
その目論見通り、基本的にここをきちんと読んだ読者は終盤に疑問を抱くことはないだろう。
本作のヒロインとして確立されていた「雪」は最後まで主人公に寄り添うのかな、と考えていたので、ここで縁が切れるというのは予想外だった。
また、主人公がうまく復職出来ない、というのも予想外。
命題として「幸せとは何か。あなたは幸せだったか」というものが掲げてある以上、今まで義務として行ってきた仕事は(上司に怒鳴られていたとしても)無駄じゃなかった。
という落としどころが丸いのかな、という予想のもと読み進めていた。
けれど、本作はそうではないらしい。
終盤は主人公が自殺を失敗した箇所から。
ここから主人公は幻聴が聞こえてくる、というある一種の能力適なものを使えるようになる。
ジャンヌダルクの話や、(これは後から確認して気づいたのだが)プロローグなどからこれは示唆されていたのだろうが、これによって本作がどこに向かうのか、というのが分からなくなったというのは否めない。
きっとこの力を利用することで、本作の命題について答えを出していくのだろう。
それは分かるのだが、もっと明確なフックが欲しかったな、というのが本音だ。
個人的には唐突な印象を受けた。
ただ、ずっとリアルに沿った作品であった本作に、わざわざこのような異能的要素を盛り込んだ、ということはそれだけこの異能に可能性を感じたのだろう。
それか、他作と差別化をはかるためかもしれない。
けれど、私は唐突な印象を受けた。
しかし、あくまで唐突な印象を受けた、というのは個人的な意見だ。他の読者の場合、そんな印象は受けないかもしれない。それだけはご理解を。
では、総括。
文章力は申し分ない。
命題や描きたいものを読者に印象付ける能力もきちんと備わっているように思えた。
なんとなく書いているのではなく、きちんと伝えたいものがあって、それを伝えるために設定や、キャラクターを形作っていったのだと思う。
非常に完成度が高い。
ヒロインとして、交際相手が出てくるが、そこまで物語の根幹にかかわってくることはなく、本筋としてはほとんど主人公の葛藤のみに近い。
「幸せとは何か」という哲学的命題を読者に考えさせるためには、この形式が最も良いかもしれないな、と読んでいて思った。
と、ここまでがプラスの感想。
下は気になったところ。
まず、全編で指摘したように『難読漢字』について。
特に中盤出てきた囂囂はそもそも難しすぎてデジタルだとつぶれていた。
また、おそらく長久様も理解はしていると思うが、そもそもこの作品はweb小説向きではない。
そもそも人気のないカテゴリーである現代ドラマ、というのはさておきもう少し読者への寄り添いがあったほうが良いのかな、と感じた。
まず、上でのプラス要素であった、ほぼ主人公の葛藤で構成されている本作。
つまり、大事な部分はほとんど地の文にある、というわけだ。
文庫本なら全く問題はない要素。
ただ、web小説及びライトノベルにおいて会話文の存在は重要視されているように思える。
キャラの立った人物たちが会話することによって作品へ楽に共感出来、さらに主人公たちの成長を促すことが出来る。
しかし、この方法を使うと作品が軽くなる――いわばライトノベルじみたものになるというのは否定できない。
長久様が最後に描きたいものがなんなのかは未だ分かりませんが、「とりあえず読んでもらいたい」という思いが「作品のテーマを伝えたい」という信念と競合しないのであれば、もう少しweb読者向けに作品作りをしても良いのかな、と感じた。
同じようなテーマを扱っている作品で、web向け。
さらには書籍化していた作品に心当たりがあったので下に置いておく。
よければどうぞ。
それでは。
おすすめ作品 https://kakuyomu.jp/works/1177354054881580022
作品URLは他サイトのため割愛。
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