概要
ある日突然現れた神が、『人間レベル』システムを世界に公表した。
善行は加点し、悪行は減点する。
それだけの単純なシステムの施行により、世界は善行で溢れるようになった。
だがそれらの善行は、他人ではなく自分を救うための偽善的なものだった。
青年、平野雄一はそんな偽善者たちを蔑み、今の世に強い憤りを感じていた。
だが一人の心優しい少女との出会いにより、彼の善行への考えは徐々に変わっていくこととなる。
善とはなにか。偽善とはなにか。
雄一はその答えを見出そうとするが……。
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!物語が終わった後の想像が、心に際限なく溢れ出る
登場人物、シチュエーションともに(いい意味で)単純で、このテーマを語るのに必要な要素が端的に用意されている。
神、ヒロイン、葛藤、相棒。
スピード感も丁度よい。テーマを語るのに必要なご都合で進み、これまたいい意味でラノベ感があるのだ。だからテーマが深いのに読みやすい。
作風は違えど総じて星新一を匂わせる。
テーマも「人間性への批評」ってのは星新一が好きだった展開の一つ(と思う)。
「人を助ける動機はなに?」は、割とメジャーなテーマで、それこそ週刊少年ジャンプには頻出と言ってもいい。
でも今までこういう切り口はどこを見回してもなかったんじゃないかという、話の中核となる「システム」。
敢…続きを読む - ★★★ Excellent!!!イデオロギーのその先へ...
近年ラノベ業界を席巻している悪役令嬢もの、追放もの。
それらは不条理な待遇からチート能力で成り上がり、それまで虐げてきた人たちを見返す、といった物が多い印象がある。
多かれ少なかれ、こういった作品の主人公はこう言いたいのである。「どうしてこんなに助けてやってるのに、見返りをくれないんだ? 俺みたいに有能なやつは厚遇され、両手に花を引っ提げて生活するべきだろう」と。
本作はそんなラノベの現状に一石を投じている。
この作品の主人公は一撃でピーター・アーツを屠れる肉体を持つわけでもないし、フェルマーの最終定理を片手間に証明できる頭脳があるわけでもない。
そう、無力なのである。
でも、必死に周…続きを読む - ★★★ Excellent!!!「善」って結局なんなのか
善と偽善どちらによる行動なのかは本人にしか分からない。
いや、本人でも分からないかもしれない。
それでも「仕方なく」とか「強要されてする」というものではないと思う。
以前、困ってる人を助けてその人を見送った人が自分のしたことに対して「馬鹿らしい」と言っていたことがあった。
それ以来、人助けってなに?いい行いってなに?と思うようになった。
この物語は、そのことの答えはなくても深く考えさせてくれた。
文がグダグダになっている気もしますが…伝えたいことは、
主人公の思いや表現の仕方が細やかで繊細で綺麗
「善」「偽善」とは何かということがぶれずに軸となっていること
物語に気づいたら引き込…続きを読む