概要
この世界には善とも悪とも呼べない、理解不能な神がいる。
毎年身体の一部が村に降ってくる神、姿を現すことなく村人の死後内臓を食い荒らした事実だけを残す神、ダムの底でエレベーターに住まう死者を迎える神、一切の記録がなくただ信仰だけが残る神––––
理解もできず、対処もできず、平穏を脅かす神々と、ただ記録し続けるしかない役所の人間たちの話。
【第一部・登場人物】
片岸:語り手。領怪神犯調査員。行方不明の妻を探す。
宮木:領怪神犯調査員。片岸の後輩でバディ。
六原:領怪神犯
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!ただのオカルトやホラーで終わらない、物語として完成されすぎている怪奇譚
最初、いわゆる『洒落怖』のような都市伝説系のオカルト短編だと思って読み始めたのですが、回を重ねるごとに募る些細な違和感。
意図的に配置されたそれらの伏線が、後半へ進むにつれて怒涛でありながらも無理やり感のない綺麗な回収のされ方をしていくのには感嘆の息を漏らさずにはいられません。
下手に物語について触れるとネタバレを踏みかねないので、とりあえず読みましょう。読んで後悔することといえば、つい最新話まで一気読みしてしまい、都築が待ちきれなくなることぐらいでしょうか。かくいう自分も、あぁ、もう少しゆっくり読めばよかった、と後悔しています。
二周目も楽しめること間違いなしの作品です。とりあえず…続きを読む - ★★★ Excellent!!!畏れと信仰、触れるべきではない存在としての神を調査する恐怖
畏れるべき、人の尺度では測れない神とそれを調査して被害をなるべく抑える主人公側の奔走。神秘的だが神故の行動原理で事件を解決したり曖昧に終わらせていくところがとても私好みでした。
個人的にですが、こういった怪異ものの物語を読むときに求めていた理想がこの「領怪神犯」といっても過言ではないくらいに嗜好に当てはまっていました。
コミックスの1巻からこの小説を知りましたが、こういった連載形式ならではの話数の区切り方や物語構成が内容とも合っていて面白くすらすらと最新話まで読み切ってしまいました。
読み進めるたびに物語の世界により深く触れられるような感覚を持ちました。
とても素晴らしい物語をありがとうご…続きを読む - ★★★ Excellent!!!人にできるのは、ただ「記録」することだけ
作者自身もおっしゃるように、SCPや陰湿因習寒村の成分を大量に摂取できる短編連作です。私の抱いた印象は和風X-FILEでしょうか。
不可解で異常な事件が起きながらも、警察が動くほどわかりやすく直接的な被害ではない塩梅が絶妙です。
人智の及ばない超常存在に対し人間はどう向き合って生きるのか。
報告書くらいは書けそうだけどなかなか根本的な解決には至らないもどかしさ。
殊更に恐怖を煽るのではなく、静かに迫るようなおぞましさが魅力的なホラー作品です。
好きな神は……「辻褄合わせの神」ですかね。
神の二面性というか、人間次第で善神にも悪神にもなるというか……。
「ひとつずつ降りてくる神」も想像できる…続きを読む