イデオロギーのその先へ...

近年ラノベ業界を席巻している悪役令嬢もの、追放もの。
それらは不条理な待遇からチート能力で成り上がり、それまで虐げてきた人たちを見返す、といった物が多い印象がある。

多かれ少なかれ、こういった作品の主人公はこう言いたいのである。「どうしてこんなに助けてやってるのに、見返りをくれないんだ? 俺みたいに有能なやつは厚遇され、両手に花を引っ提げて生活するべきだろう」と。

本作はそんなラノベの現状に一石を投じている。

この作品の主人公は一撃でピーター・アーツを屠れる肉体を持つわけでもないし、フェルマーの最終定理を片手間に証明できる頭脳があるわけでもない。
そう、無力なのである。
でも、必死に周りの人を守ろうとする。

そして、善意の見返りを求めない。
主人公たちは人間レベルに一切の興味を示さず、自分が人のためになせることを淡々とこなすのである。
その精神の強さ、高潔さは誰もが持ち合わせているものではなく、だからこそ本作は読者を惹きつけるのだと思う。

カクヨムが誇る至高の逸品、ぜひご堪能ください。



PS 作者さん、書籍化おめでとうございます!!(˃̶͈̀△˂̶͈́)

その他のおすすめレビュー

浪 麗雷さんの他のおすすめレビュー54