物語が終わった後の想像が、心に際限なく溢れ出る

登場人物、シチュエーションともに(いい意味で)単純で、このテーマを語るのに必要な要素が端的に用意されている。

神、ヒロイン、葛藤、相棒。

スピード感も丁度よい。テーマを語るのに必要なご都合で進み、これまたいい意味でラノベ感があるのだ。だからテーマが深いのに読みやすい。

作風は違えど総じて星新一を匂わせる。
テーマも「人間性への批評」ってのは星新一が好きだった展開の一つ(と思う)。

「人を助ける動機はなに?」は、割とメジャーなテーマで、それこそ週刊少年ジャンプには頻出と言ってもいい。
でも今までこういう切り口はどこを見回してもなかったんじゃないかという、話の中核となる「システム」。
敢えていうと銀河鉄道999はこれに当たるわけだけど、本当に端的にそれを凝縮したシステムになってて、舌を巻く。

物語としてはバッドエンドってことになるのかもしれないが、しかし、もしありきたりな(ハリウッドアクション的な)結末であったら、それこそ弟くんは浮かばれないし、主人公二人も茨の道で、読後感はモヤモヤしたものになるだろう。

そう、むしろこの顛末であればこそ「その後」を想像したときに救いがあるのだ。

読者が、その後を無数に楽しみ、あるいは悩み、考えさせられる、とてもいい作品でした。

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