エピローグ
あれから一週間が過ぎた。私は一人、墓地を訪れていた。
一つの墓石の前で足を止める。そこに雄一さんが眠っている。
「こんにちは雄一さん」
私は持ってきた花をそこに供えて、静かに手を合わせた。
「雄一さん、和樹とはもう会いましたか? 天国にはサーカスはありましたか?」
ぽつぽつと呟く。今日は泣かないと決めていたのに、どうしても涙が滲んできた。
「雄一さん……お葬式の日、見てましたか? ごめんなさい……翔子さんが雄一さんのお母さんと大喧嘩して、でも翔子さん以上に私も怒っちゃって……本当にごめんなさい」
お葬式で一番泣いていたのも翔子さんだった。あれ以来翔子さんとは凄く仲良くなった。
「でも私……悲しかったんです。雄一さんが死んじゃって、皆は立派だったって言ってたけど……私、悲しくて」
大切な人を失ったのはこれで二度目だ。
たとえ雄一さんが天国に行ったと分かっていても、私はその死を悼まずにはいられなかった。
溢れ出る涙を止めることもできず、私は雄一さんの墓石に手を這わせた。
「そういえば、私あのとき、大事なことを雄一さんに伝え忘れてました」
そうして私は、あの日言えなかった言葉を、心から口にした。
「――ありがとうございます、雄一さん。私もあなたに会えてよかった」
いつかあなたにもう一度会えたなら。
そのときはきっと、言いそびれたもう一つの言葉も伝えようと思った。
人間レベル 橋本ツカサ @hashimoto_T
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます