自分たちの価値を認めてほしい、強くなりたい、世界の一員でありたい。登場人物たちの願いの根底は同じなのに、運営とプレイヤーが生み出した格差が、彼らの絆と役目を引き裂き歪ませていく――――世のソーシャルゲームひいては人間の在り方を問うと言っていい作品です。
ゲームが人気になり、キャラが増え、愛でられるほどに生まれていく強さと人気の格差を下地に、ゲームキャラたちの負の感情と悲哀と思惑が交錯する世界観は、ゲームキャラたちのものではあるものの現実世界に通じるものがあり、胸が痛くなるほど共感できて、独特の深みがあります。余計な展開もなく、隅から隅までが世界の説明と後の展開に活かされている場面構成も、よく考えられていて見事の一言。ソーシャルゲームをしない人でも、異世界の嫉妬渦巻く人間ドラマとして充分楽しめるはずです。
読んでいるうちに、今までやってきた数々のゲームのキャラに、土下座で謝りたくなりました。中途半端なスキルだから使えないって言ってごめんなさい……!
それとなんだか、今やってるゲームのキャラたちを平等に愛でたくなりました。いえ、いつもできるだけ平等にとは思っているのですがね……。