あなたが去る前夜 著:水狗丸
小さな主人が明日、ここを去る。そんな男の独白とその日の夕餉のはなし
『料理研究家リュウジ×角川食堂×カクヨム グルメ小説コンテスト』参加作品。
さて、恒例の前座から。
本作は、この感想置き場では初の『スピンオフ』タイプの作品。
長編シリーズの番外編の様なものらしい。
本作が上に記した『料理企画』のためにわざわざ作成された作品なのか、それとももともとこういった作品を作る予定があり、それがたまたま企画と合致したのかは私の知るところではないが、スピンオフが企画に参加しているのはなかなか珍しいように思う。
わざわざここまでするということは、相当本作を愛しているのだろう。一つの作品にそれだけの熱量をささげられるというのは、一つの才能。
尊敬である。
では、本題に入ろう。
おそらく存在するであろうキャラのバックらグラウンドについてはほぼ分からないのでここでは言及しない。
というわけで言及するのは文章まわりについて。
少しだが、無いようにも触れると思う。
さて、まず文章についてだが、非常に良い。
周囲の状況と自身の心境が、一人称視点であるにも関わらずきれいに描写されている。描写が心理、状況のどちらかに偏ってしまう人も多い中、本作はバランスも良い。
これはなかなかできることではない。
この感想置き場で読んできた作品の中でもかなり上位の文章力をお持ちだと思う。
ここまでの文章を書けるからこその指摘なのだが、私にとって、本作は文章が詰まっていてかなり読み辛いタイプのものだった。
これは電子ならではの問題で、紙では全く問題にならないものだが文字が詰まっていると目が疲れてしまい読み辛い。(これは私だけかもしれない。けれどそういう話はちょくちょく聞くし、かなりの人間が配慮している)。
というわけで、良ければ自分なりの改行ルールを作ってみてほしい。もちろん、そんな読者に媚びるのは嫌だ。自分のやり方を貫く、というのなら私の言うことはすべて無視してもらって構わない。
では、ここまでを踏まえて本題に入ろう。
本作では、空行を挟む改行は一度しか出てこない。
これは必須の空行。時間軸が大きく飛ぶタイプの空行だ。
私はこういった時間が飛ぶ空行は
◇
こうやってさらに目立つようにしている。この手法は紙の媒体でもよく見るものだ。空行の代わりに何か記号を置く。
これによって場面が切り替わったことを示す。
私が先ほどまで述べてきた定期的な空行を成り立たせるためには、この記号を使った空行は必須。
例を出そう。
※
『転移したら山の中だった。反動で強さよりも快適さを選びました。』
https://kakuyomu.jp/works/1177354054891139802/episodes/1177354054891141560
※
これはカクヨムランキング第一位作品の第一話。
私はこの作品を読んだことはないが、改行の例としては役に立つ。
自作と比べてほしい。そうすればすぐに気づくはずだ。
かなり頻繁に空行が挟まれているということに。
ここまで露骨に挟む必要はないと思うが、こうやって読者が読みやすいような配慮を行っている作品は少なくない。
気付いたかどうかは分からないが、私はセリフ文と地の文の切り替わりで空行を挟むことにしている。
まあ、ここまで書いておいてなんだが実は上位にも空行を挟んでいない作品は存在する。
これも例を出そう。
※
『横浜駅SF』
https://kakuyomu.jp/works/4852201425154905871/episodes/4852201425154905928
カクヨムではかなりの知名度を誇る作品であるため、名前くらいは聞いたことがあるかもしれない。配慮などしなくても作品のクオリティで黙らせることは出来る。
というか、そもそも空行なんて挟まれていなくても普通に読める人間も存在する。
つまり、結局自由なのだ。
空行は挟んでも挟まなくても良い。
『じゃあなんでわざわざ書いたんだ』なんて思ったかもしれない。
答えは単純。
『空行を挟まないことで読みにくく感じる人がいるよ。それに対して何かしら対策を取ってる人もいるよ』
ということを単純に伝えたかったのだ。
知っていてあえてしないことと、そんなこと全く頭にない、とでは違う。
ぜひ頭の隅にでも置いといてほしい。
さて、こんなものだろうか。
作品自体は良かった。自信を持ってほしい。
それでは。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます