老人と竜 著:伯爵
お前をパウロと呼ぼう。古代語で抗う者を意味する。その翼で抗ってみよお前をパウロと呼ぼう。古代語で抗う者を意味する。その翼で抗ってみよ
ここから感想。
読み始めて、最初に思ったのは『カロリー高いな、これ』だった。
私は、作品の読みやすさ、扱う題材の重さ、カテゴリーなどを総合して、読むのに体力がいる作品、というのを『カロリーが高い』なんて表現するのだが、この作品はまさにそれだ。
もちろん悪い意味ではない。
まず、表現に厚みがある。
あまりに文学的な表現が多すぎて、最初、物は実際に動いているのではなく、比喩表現がされているのだろうな、と思ったくらいだ。
『嗄れた声で、誰にともなく呟いた。ふたたび沈黙が部屋を満たす。薪が一本宙を舞い、暖炉の火に飛び込んだ』
そうここだ。
主人公が薪を暖炉に入れたことを、比喩表現を使ったのかと思った。
しかし、後半、包丁をたしなめるシーンがあったので主人公の意思とは関係なく物が動いているのだろうな。
つまりは本当に物が勝手に動くような世界なのだろうな、と理解することができた。
さて、せっかく上の文を抜粋したのだからもう一つ言及するとしよう。
そう『嗄れた』だ。
流石に難読漢字だろう、これは。
いや、私の学がないだけか? いやいや。そんなことはないはずだ。
そもそも私のPCではこの文字、変換できないし。
以前、この感想置き場で感想を書いた作品にも、このアドバイスをしたのだが、あまりにも読むのが難しい(おおよそ一般人が読めないであろう)漢字には極力ルビを振ったほうが良い。
まず理由から話そう。
といっても簡単な話だ。その文字が読めなかった読者は『その文で何秒か読む進めるのをやめてしまうから』に他ならない。
例えばの話だ。今回のように読者が読み進めていて、読めない漢字が出てきたとしよう。より作品を理解したい、という読者はわざわざ出てきた漢字を調べるだろう。
この時点で、一旦作品から距離を置いてしまうのだ。これにより作品への没入感が削がれることは説明するまでもない。
よって、難しい漢字には極力ルビを振ったほうが良い。
と、ここまで語ってきたわけだがそこまで忠実に守る必要もない。ということも覚えておいてほしい。あくまでそういった話もあるよ。という程度にとどめておいてほしい。
もちろん、上で述べたのは事実だ。
しかし、個人の感想であるという側面を捨てきれない。それに、どこからが難読漢字か、というのも非常に難しい線引きだ。
だから、あくまでそういう話があるよ、ということで。
さて、ここまで長く語ってきたのでそろそろ内容のほうに入ろう。
といっても、内容を語るのが非常に難しいタイプの作品であったように思う。
物語は確かに着実に進んでいったし、伝えたいこともやんわりと伝わってくるような作品だったが、明確な説明がほとんどなかった。
例えば、作中ずっと古代語が出てくるのだが、これが作品とどのように関係していたか明確な説明はなかった(私が見落としているだけかもしれない)。
物語の終わり方も旅の始まりといったような感じで、果たしてハッピーエンドなのかバッドエンドなのかいまいち理解がしづらい(もちろんバッドではないだろうが)
つまり、この作品は読者に考えさせるタイプの作品、というわけだ。
国語の教科書を彷彿とさせるこの形式は短編だからこそ成り立つ。短編であるという点を最大限に生かした作品だった。
さて、こんなものだろうか。
もう少し語ってもよいのだが全く見当違いのことを言ってもあれだ。
というわけで。
それでは。
作品URL:https://kakuyomu.jp/works/16816700429212351964
作者URL:https://kakuyomu.jp/users/hurito
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