理論上の空想 著:キザなRye
研究は根気がいる。根源は研究者の好奇心から来る。私は、僕は、これをやりたい、これを知りたい。ただそれだけ思いが私たちの生活を豊かにしてくれる。教科書を疑うような思考力の高さが必要だ。
でも研究者を固定観念で見てはいけない。それだけは約束して欲しい。
ここから感想。
作品を読んでいてまず感じたことがあった。この作品なんだか不思議な雰囲気だなあ、と。
「理論上の空想」という作品は主人公の一人称視点で描かれている。非常にポピュラーな方法だ。
なら、どこに不思議な感覚を覚えるのだろう?
答えは非常に簡単だった。主人公の一人称視点で描かれている作品で、読者が違和感を覚えるときは、主人公が異質であるときである。
俗に「信頼できない語り手」と呼ばれる叙述トリックの一つだ。
しかし、実はこの作品の主人公は別に「信頼できない語り手」ではない。
なんだお前。ここまで説明しといて違うんかい。と言いたくなったところだろう。
まあ、待て。
違うのだから仕方ないじゃないか。主人公はいたって常識人なのだ。
じゃあ、どんな理由があって不思議な感覚になったんだ。と聞きたいところだろう。
それこそ簡単な話だった。
単純にこれは作者の個性なのだ。
文章に個性が現れるというのは悪いことではない。むしろ良いことだ。明確な強みがあったほうがファンをつくりやすいだろうし、他人との差別化もしやすい。
私も、なにか自分だけの表現を探ってみようかな、なんて思わされた。
完走した感想はこんなもの。
以下、内容の感想を。ネタバレ含む。
まず思ったのは特殊な場面設定だな、ということ。
主人公はとても優秀な研究者。いや、まだ学生なら研究者ではないのか? まあ、そういう事は置いておいて、研究室に身を置く優秀な人間である。
そしてヒロインはその恋人。
これだけ見れば、まあよくある恋愛ものかな、というところ。けれど、この作品ではいきなり地震が起きる。
じゃあ、すべてが崩壊するのかといえばそうではない。そもそも恋人は研究室にはいないのだ。結局、主人公は被災者として、大きな被害を被ることがないまま恋人と仲たがいし、そして仲直りをする。
さらには結婚までするのだが、如何せん特殊だ。
なんせ、二人にとって非常に大きなイベントというのは起きていない。
にもかかわらず、二人の関係はしっかりと変わるのだ。
作品として、大きな見せ場がない、といえばこれは大きな欠点になるだろう。しかし、現実とは総じてそんなものだ。なにか大きなイベントが起きてそれによって人生が激変するなんてそうそう起こらない。
この作品はそんなことが書きたかったのかな、なんて思った。
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