公爵令嬢はジャンクフードが食べたい 著:菜花村

 ジャンクフード大好きな原田輝行 37歳と、好奇心旺盛な公爵令嬢 フランドール・フィアンマ 5歳。

 似た者同士の二人(一人)が、魔法の世界でジャンクフードを食べるために、力を合わせて数々の困難を乗り越えていく飯テロコメディー。


 

 ここから感想。



『第1回スターダスト ノベル大賞』【審査員奨励賞】受賞 ☆電子書籍化決定☆


 らしい。

 というわけで、とりあえず一定の期待を寄せて読み始めた今作。

 まず、最初の感想は読みやすいな、だった。

 じゃあ、実際どこが読みやすいのか、と聞かれれば難しい話だが、まず最初に思いつくのは改行が多いことだろうか。

 これが小説として良いかどうかは置いておいて、web小説という普段慣れ親しんでいる紙媒体とは違う、という事実をしっかりと考慮した形態だなと、感じた。


 さらに、感心したのが一人称にルビがふってある点である。これはなかなか見ない方法だ。(フランドールのように)

 これは複数の視点、さらにはそのいくつかを一人称視点でえがくような群像劇では読者にとって非常にありがたい描写である。

 もちろん、群像劇を書くのなら地の文などでしっかり誰の視点かはっきりさせろ、と言いたいのは分かるが、分かりやすいに越したことはないのだ。

 

 また、一話が短い、というのも読みやすさに一役買っている。

 紙媒体では一話の長さなど気にすることはほとんどないし、むしろ長くあれ、と願うくらいだが、デジタルだとそうはいかない。

 スクロールしてもスクロールしても終わりが見えないとなんだか疲れてしまうのだ。その点、この作品は数スクロールで一話が終わる。非常に読みやすい。


 

 

 とりあえず、完走した感想はこんなものだろうか。

 以下、内容の感想を。ネタバレ含む。




 上で言及したようにこの作品では一人称にルビがふられている。基本的には『俺』と『私』、二つの一人称が使用されているのだが、なんとどちらも同じ人間が使う一人称なのだ。

 私の一人称で語られる視点は主人公のものだし、俺の一人称で語られる視点も主人公のものである。


 簡単に言えば、俺が転生前の主人公の人格で私が転生後の主人公の人格だ。

 これだけであれば「なんだ、普通じゃん」と思われるだろうが、この二つの一人称が何の場面展開もなく切り替わる。それが非常に新しい読書体験を与えているような気がした。

 

 また、転生系では転生前の人間の人格は破棄されることが普通だ。けれど、この作品では転生前の人格と転生後の人格が共存しているようだった。

 また、タイトルの通り主人公の行動理由が食事にあるのもいいな、と感じた。基本的に文字での戦闘シーンというのは非常に書きづらいし、読みづらいとは考えている。

 もちろん、戦闘シーンの描写を得意としている作家さんもいるだろうが、流石に少数派だと願いたい。

 つまりは、異世界転生でも主軸を戦闘にフォーカスしなければさらに読みやすくなる。その点この作品はコメディーであるし、暇つぶしに読むweb小説のニーズをきちんと満たしているように思えた。

 

 まあ、こんなものだろうか。

 非常に楽しく読ませていただいた。以上。

 それでは。




 作品URL、作者URLは他サイトのため割愛。

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