冬・三連作 著:蒼井静

 冬の予習はいかがですか? ー秋に冬を思い出すための短編


 ここから感想。




 まず小説の概要を読むと『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』という文章が。

 とりあえず身構えておくか、と思ったのもつかの間、一話の一行目にて


『あたしには、誰にも言えない秘密がある。それは、パパが怪盗であるということ。』


 との表記があるではないか。

 ああ、なんだそういうタイプの注意書きか、と安心させられた。

 

 何の話やねん、とお思いだろうがただの前置きだ。

 最近はフェミニストを筆頭とする他者に束縛を強いる団体が増えているからこんな注意書きすらも必要になったのか、と考えさせられたというそれだけの話。


 さて本編にいこう。


 この作品は父のことを『パパ』と呼ぶような小さな子が主人公のお話。

 さらに、その少女の一人称視点で物語は進行していくため、地の文も優しい。

 いや、優しいという表現があっているのかは分からないが、なんだか安心する雰囲気がある、ということだ。


 と思いながら読み進めていくと二話で明らかに作品の雰囲気が変わった。

 そう、語り手が変わったのだ。

 二話の語り手は母。

 語り手が大人になると急に作品自体が締まる。


 三話に入ると、やっぱりそう来たかという気持ちにさせられた。

 そう、三話構成で三人の登場人物が出るこの作品。

 全話語り手が違うのである。三話の語り手は父。

 これは非常に上手いと言わざるを得ない。


 読者は予想通りの展開が来た時に高揚感に包まれるというのを聞いたことがある。これはまさしくそれだ。




 さて、内容の感想に入ろう。

 この作品のメインは言うまでもなく『冬眠病』であろう。

 病気の正式名称は作中で述べられていたがここでは長いので割愛する。

 二話にて登場するこの病が三話にてクライマックスを担当していた。


 架空の病ではあるが(本当に存在する病かもしれない。少なくとも私は聞いたことがなかった)、作品の中核を担うこの病について、非常に適量な説明がなされている。

 多すぎもせず、かといってこの病気について全く感情移入できないほど少なくもない。そして、周辺の描写も自然。



 まるで幽霊の成仏、のような役割を担うこの病気のお陰で作品の終わり方もハッピーエンドになっており、読了感も非常に良かった。

 

 こんなものだろうか。

 それでは。


作品URL:https://kakuyomu.jp/works/16816700428065128299

作者URL:https://kakuyomu.jp/users/omkk

 

 

 

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