第46話 進路

 次の日になると、俺ら福西中は奈良に移動して東大寺の見学をしていた。東大寺は、とてもデカくて別世界にいる様な感覚だった。


 だが、東大寺の醍醐味と言えば奈良公園で鹿と触れ合う事である。皆んなは、鹿やら鹿のフンやらで興奮してる中、俺と奏ちゃんは芽依香から詳しい情報を聞いていた。


 二木と言う奴は、永留と同じで名前の知らない奴から指示された者だった。なので、誰が差し金かは分からないままである。


「こうなったら、私は三郎丸中の奴らを全員更生させるしか無いわね」


「芽依香、本気なのか?」


「本気よ。ただ、尾崎君にも協力して貰うけどね」


「もちろんです。僕も、協力させて下さい」


 芽依香と奏ちゃんが、タッグを組めば怖い者は無いと思う。ただ、敵が必ずしも三郎丸中に居るとは限らないし情報が割れるとは思っていない。


 奏ちゃんは、昨日の件で凄くイラついており復讐に専念している。その復讐心に驚いたが、とにかく芽依香が俺らを救ってくれたし大事にはなってないから感謝している。


 そんな感じで、奈良公園での自由時間は終了した。俺らは、芽依香と別れて帰りの新幹線に乗って無事に福西中学校に帰宅する事ができた。


 それから、二学期が終わり冬休みへと突入した。その間は、何事も無く平和に過ごしており誰も部員が欠ける事は無かった。芽依香は、三郎丸中の更生や謎の敵の調査に明け暮れているそうだ。


 それから、三学期が始まった。先輩達は、受験モードが最大限まで到達している頃であり、俺らも進路について三者面談をする事になっている。


 一応、母親には奏ちゃんと二人で店を経営すると言う夢を伝えており、その為の勉強や資格もしっかりと勉強している。


 奏ちゃんは、父親の会社に関する勉強もしている。と言っても、奏ちゃんには腹違いの弟がいるので父親の跡取りは弟に任せると言っていた。


「俺は、絶対に奏ちゃんと店を経営する」


 母親は、個人の自由だし俺の事は信頼していると言ってくれた。まだ、中学生なので夢を持つ事は何も悪い事では無いが、母親として心配していると声を掛けてくれた。だが、どんな店を経営するのかも決めており、奏ちゃんと将来の事について何回も話し合っている。


「貴方が、将来の事について一生懸命に考えているのは良い事だね」


 母親は、俺の日頃の行いを称賛してくれている。生前と違って、テストの点数や部活の成績など文句無しの結果を残しているからだ。それだけで無く、家事を完璧にこなしてるので文句を言う暇を与えていない。


 家族は、俺の事を尊敬しているので俺がこの様な夢を抱いても誰も否定しなかった。しかも、生前では甘えてくれなかった妹達が今ではたくさん甘えてくれるので満足している。


 そんな感じで、進路相談は終わり部活の練習へと移った。奏ちゃんも、俺と同じで寺師丸先生に夢について話したそうだ。


 俺らが考えてるのは、卓球道具を売る店を経営しながらクラブチームを作る事だ。福西中の近くに建てる事で、より一層福西中の卓球部を強くできると計画している。


 そんな野望を抱きながら、俺は男子卓球部が強くなる為に今日も鍛錬に励んでいる。三学期の間は、個人戦が一度あったのだがそれなりの成績を残した。


 奏ちゃんが、二年生の部で優勝を果たしており俺が三位と言う成績を残す事ができた。村部と山本君は、四回戦突破を果たす事ができた。後の二人は、一回戦敗北と言う形で終わった。


 一年生の部では、アジェフが優勝を勝ち取る事ができ目崎が準優勝まで勝ち進んだ。その他は、西田が四回戦まで勝ち上がり青木と行實と都築は一回戦突破を果たした。


 ちなみに、女子卓球部はと言うと安永さんと野田さん以外は全員一回戦負けしている。安永さんは四回戦突破を果たす事ができ、野田さんは準優勝を果たす事ができた。


 俺らは、確実に成長できているので他の学校からも練習試合を申し込まれる程の人気を獲得していた。実際に、博多区にある博多ヶ丘はかたがおか中学校や西区にある伊木浜いきはま中学校などの市大会レベルの学校と試合を組む事ができた。


 そんな感じで、かなり充実した日々を過ごしてるのであっという間に三学期が終了へと近づいた。先輩達は、すでに卒業しており受験も終わって一段落している所だった。


 富永先輩と木下先輩以外は、公立高校の受験に合格したそうだ。久原先輩も、辞めた日からしっかりと勉強したので公立高校に受かったとの事だ。


 落ちたと言っても、富永先輩は偏差値の高い男子校に合格しており、木下先輩も大学と併設している私立高校に合格している。


 その情報を、先輩達の口から聞けた事でもうすぐ受験生だと言う自覚が持てたので母親と高校受験について話をした。母親は、私立高校出身なので私立の楽しさを知っている。だからこそ、自分が行きたい高校を選ぶべきだと言ってくれた。


 しかし、父親はお金の問題で公立高校の進学を提案していた。実際、妹の友希が来年から中学生になるので高校の授業料が重なるとの事だった。だが、今の俺なら選びたい高校なんていくらでもある。ただ、奏ちゃんと同じ学校が良いと思っているのでそんなに大した決断はできないでいた。


 それから、春休みが突入した。生前よりも楽しかった二年生も終わり、上級生と言う自覚を持ち始めた頃だった。生前と同じで、田尻先生は定年で小林先生は転勤でこの学校から居なくなるとの事だった。新学年になるまでは、芽依香が毎日来て顧問代わりになるとの事で顧問不足は解決している。


 生前では、田尻先生のお陰で女子卓球部が輝いてたので先生達はチヤホヤされていた。しかし、今では女子達からの感謝は薄い様に見えるし、男子の方が輝いてるので先生はそっちの方に力を入れている様子だった。


 それに、同学年の女子達も男子卓球部に遠慮している感じだった。やはり、生前と違うので少し違和感はあるがそれ以上に讃えられる喜びが多かったのでどうでも良かった。


 そんな事もあり、指導者に困る事も無く女子より実力も強くなっている事から今まで思われてきた廃部の理由は全て無くなったと確信している。


 なので、安心して奏ちゃんと進路についての話し合いができた。奏ちゃんから、俺と同じ高校に行きたいと言っているので行く高校については二人で決め合う事にした。


 そんな感じで、奏ちゃんと芽依香のお陰で楽しく無かった中学時代を変える事ができた。後は、全部の目標を達成する為に永留や二木を動かした謎の敵を何とかしなければならないと思った。

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