第16話 新人戦(前編)

 あれから、毎日のように奏ちゃんとエッチな事ばかりしていた。俺らは、部活も集中できない程の快楽に溺れてしまう。ユニフォームが届いてからも、奏ちゃんのユニフォーム姿に興奮を覚えたのでユニフォームを着ながら性的行為に走る事もあった。


「今日もエッチな事したい」


「明日は大会なんだから駄目だよ」


「そう言って、いつも待ってるじゃん」


 俺らは、誰もいない男子トイレでイチャイチャしていた。奏ちゃんの家ばかり泊まってると親に怪しまれるので、学校の時間だったり家に着く直前だったりと工夫をしながら興奮を晴らしていた。


 本来であれば、奏ちゃんの身体で初めてを迎えるのはあり得ない事だ。俺は、この歳で激しい事を覚えてしまうと戻れなくなりそうで怖い思いをしながら奏ちゃんの身体を触っていた。


「なら、今日も僕の部屋でやる?」


「もちろん」


 今日は、休日練習なので午前中で部活が終了する。なので、そのまま奏ちゃんの家でエッチな事を夕方までやる事が決まった。


 部活が終わって、奏ちゃんの家に着いてからは激しい行為をするばかりだ。キスもかなり上手くなった奏ちゃんは、舌を入れてきたりと大胆な事をしてきた。それが、堪らなくなり俺も舌を織り交ぜてしまう。


 お互い発散し終わると、息が荒くなってしまって倦怠感に襲われた。そして、時間も夕方になり体力を回復する為に布団で寝ている。


「このままじゃ、明日に響きそうだな」


「僕は、スッキリしてるから大丈夫だよ」


 俺は、息が荒くて体力が回復しそうにない感じだった。でも、明日に備える為に俺は着替えて奏ちゃんの家を後にした。それから、次の日になり俺と奏ちゃんはお互いに恥じらいながらも普通に接して大会に挑んだ。


 俺らの学校は、Aグループに所属しており俺ら含めて五校が所属していた。Bグループは、四校が所属しているので、早良区は合計で九校が新人戦に参加した。


 俺らのグループには、練習試合で戦った事のある【鷲取中学校】がいる。その他にも、早良区で二番目に強い【さきがけ中学校】と、早良区唯一の私立中学校である【東条学院中学校】と、山のど真ん中にある学校の【銀竹ぎんたけ中学校】が同じグループだった。


 一番最初に鷲取中学校との一戦だった。俺らからは、富永先輩が一番で出場して二番に坂本先輩が出た。三番は、俺らダブルスメンバーが出場する事になっている。


 相手も同じで、レギュラーを勝ち取った先輩達が参戦している。俺らと対戦する事になったのは、二年生の山越やまこしと同じく二年生の田原たはらと言うコンビだった。


 俺らと同じ学年の田浦君達は、ベンチの方で俺らの対決を眺めていた。相手の先輩達は、どちらも攻撃型の選手であり連帯力もバッチリだった。それに対抗する為、奏ちゃんは自分に合わせてほしいと言ってきた。それに乗った俺は、まず相手の弱点を見極める為に一セットを捨てるつもりで戦った。


 田原は、坂本先輩と同じ中ペン型ラケットだった。積極的なスマッシュに加えて、奏ちゃんのドライブを無効にするペンカットを自在に扱う戦法だ。


 そのコンビの山越は、俺と同じ攻撃型でありスマッシュもドライブも迫力が凄いので俺は相手の雰囲気に呑み込まれそうに感じた。


 しかし、奏ちゃんは相手の反応速度を超える程の返球を繰り返した。田原のサーブに俺が普通に返して、山越が迫力のあるドライブを展開してきた。それを、奏ちゃんがカウンタースマッシュをして田原は反応できなかった。


 俺は、奏ちゃんのカウンターに任せる事を意識して自分が仕掛けれる攻撃は率先して仕掛けていく事を意識した。


 奏ちゃんは、昨日の出来事を忘れているかの様にこの試合に集中していた。奏ちゃんは、一セットを相手に上げるどころか相手を見切ったかのように攻撃を仕掛けていく。


 その調子で、この試合は三対零で勝利したので俺達は手を取り合って喜んだ。先輩達は、坂本先輩は負けたものの、富永先輩は勝利を収めていた。団体戦は、勝利の回数を先に三回取った方が勝利になる。現に、二対一で俺らの学校が勝っているので、後は四番の舞谷先輩と五番の高目君にかかっている。


 舞谷先輩は、かなり相性が良い相手だったので見ていて負ける心配はしなかった。そして、そのまま舞谷先輩が勝利した。


「まさ君、勝ったね!」


「おう!」


 俺と奏ちゃんで、喜びを分かち合った。奏ちゃんの喜んだ顔が可愛くて、次の試合も勝ちたいと言う思いが強くなった。


 次の試合は、早良区で二番目に強い魁中学校との一戦だった。この試合は、負け試合だと皆んな思ってるので、体力温存の為に本気では戦わない事にした。


 俺と奏ちゃんもその作戦に乗り、本気では戦わない事にした。俺は、少し残念な気持ちになったが次の銀竹中学校との一戦の為にその作戦に乗る事にした。


 作戦通りの結果になった俺らは、次に銀竹中学校との一戦をする事になった。銀竹中学校も、魁中学校の試合を捨て試合としてやっていた事を奏ちゃんは把握していた。


 この試合では、坂本先輩が一番で舞谷先輩が二番で出場した。三番の俺らも出場しに台へと移動した。


 もちろん、相手は一つ上の先輩だった。一人は、舞谷先輩と同じ戦型の倉本くらもとと坂本先輩と同じ戦型の神崎かんざきのコンビだった。二人とも、身長が大きくて俺らが幼く見られてる感じがした。


 俺らは、この二人に苦戦している。しかし、坂本先輩はギリギリの状態で勝利していた。その状況を応援していた富永先輩の掛け声で俺らも気持ちが強くなった。


「まさ君、この試合は勝つよ」


「分かってる」


 倉本のカット技に、俺らは苦戦を強いられていたが、奏ちゃんのスマッシュで一変した。倉本のカット技と神崎のブロック技の両方が、俺らの前に立ち塞がった。


 しかし、俺は無理に攻撃を仕掛けずに返球する事だけを考えて攻撃は奏ちゃんに任せるスタイルだった。その戦法が上手くいったのか、三対二で勝利した。そして、他のメンバーも勝利したのでこの試合は俺らの勝利で終わった。


「まさ君、やったね!」


 奏ちゃんは大喜びだった。俺も、奏ちゃんと共戦できている喜びがある。正直、勝利なんてどうでも良かった。皆んなと団体を組んで、自分が活躍している事が何よりも嬉しかった。


 最後の相手は、東条学院中学校だった。この学校は、小学校から大学まで併設している私立学校だった。小学校のクラブから、中学生や高校生を相手している人が多いので、かなり強い子は揃っている。


 一番は坂本先輩が出場して、二番は富永先輩が出場する事になった。卓球台が二台しか無かったので、どちらかの試合が終了するまで待機する事になった。


 試合を観ていると、どちらも苦戦しているようだ。富永先輩は、攻撃を仕掛ける前から自分で失敗をしてしまっている。先程までは、攻撃が成功していたり元気があったりと調子が良かったが立て続けの試合なのか体力が無い感じがしている。


 坂本先輩は相手との相性が悪かった。相手のミスを誘う戦法の坂本先輩は、自分から攻撃を仕掛けずにブロック技で対抗していた。


 しかし、相手は一度もミスをせずにガツガツと攻め続けている。体力が切れているのか、坂本先輩もミスが多くなってきている。自分がミスをしていては、相手の思い通りで終わってしまう。


 雰囲気が悪い中、二人とも同時に試合が終了した。もちろん、二人とも敗北という結果だ。次に俺らが卓球台に入り、それと同時に四番で選ばれた高目君も台に入った。


 相手は、二人とも俺らと同じ戦型である西本にしもと長谷川はせがわだった。どちらも抜け目のない攻撃に、俺らは手が一本も出なかった。俺らが苦戦してる中、四番で出場している高目君が敗北したので、途中で戦いが終了した。


 セット数が三対零で、呆気なく試合が終了した俺らは最終トーナメントに向けて休憩する事になった。俺らは、休みなしでグループ戦を乗り越えたので約一時間程度は休める事になった。


「奏ちゃん、一緒にトイレ行こうぜ」


「えっ!? こんな場所では無理だよ!」


「何が? 連れションぐらい皆んなやってるよ?」


「そ、そうだね……。はは、何でもないよ」


 俺は、赤裸々にしている奏ちゃんと一緒にトイレに行く事にした。何で取り乱したのか分からないが、奏ちゃんとご飯を食べる前にトイレ休憩に行く事にした。


「今日も、生前ではあり得ない経験だから楽しいけど疲れるなぁ」


「日高君が亡くなってからだもんね」


「何で亡くなったんかな……。俺がタイムリープしても、亡くなるのはおかしいけどね」


「本当だよ」


「俺が殺した訳ではないと思うけど、そこは分かんねぇ」


 この話は、トイレを済ませた後でも続いた。俺は、何であいつが事故で亡くなったのか不思議でいた。しかし、それが原因でまた時間がやり直される訳ではないから、日高の分まで結果を残していきたい気持ちはある。


「いたっ! すみません!」


「いてぇな! すみませんじゃねぇだろ!」


 その刹那、奏ちゃんが体格の良い男と背中がぶつかった。その男は、早良区で一番強い三郎丸さぶろうまる中学校のジャージを着ていた。三郎丸中学校の奴らは、ヤンキーが多い事で有名な学校である。


「すみません」


「うるせぇ! 三十万円払えや!」


「三十万!? ちょっと当たっただけで、それは難しいです! どうか許してください!」


「無理だったら身体で払えや! イライラしてたから、鬱憤を晴らすのに丁度いいぜ!」


「僕が代わりに受けますので、どうかこの子を許してやってください!」


「まさ君、大丈夫だよ。三十万ぐらい安い金額だから気にしないで」


「ふん、潔い奴だな。なら、今すぐ払えや」


 俺らは、窮地に立たされていた。いかつい男は、自分から当たっておいて大金を払わせようとするし、俺の大事な奏ちゃんの身体を殴ろうとほざいていた。これだから、ヤンキーは大嫌いなんだ。しかし、奏ちゃんは大金を真面目に払おうとする様な顔つきに変わっていた。


 その刹那、いかつい奴の背後から女性が現れた。その女性は、麦わら帽子を被っており洋服は黒のワンピースを着ている。


「あぁ? 誰だテメェ!」


「悪いけど、貴方は大金を貰う価値はないわ」


 その女性は、そう言いながら男の顔に向けて催眠スプレーを吹っかけた。その男は、何も抵抗できずに眠ってしまった。


「コーチ!?」


「どうも〜、尾崎君」


 男を眠らせた女性は、奏ちゃんが通っている卓球クラブチームのコーチのようだった。その人は、奏ちゃんの応援を見に来ていたらしく俺にも紹介してくれた。


「尾崎君から、毎日のように聞いてるわ。君が清瀬政真君だね?」


「はい……。貴方は?」


「私の名は、政倉真奈美まさくらまなみと言うのよ。よろしくね」


「お願いします……」


 政倉コーチは、奏ちゃんの試合を観ていたので軽くアドバイスをしていた。その後に、俺には今日の大会が終わるまでは用心しておく事を言われた。全く卓球には関係のないアドバイスだった。


「私は他の学校の試合を観てくるから、また後でね」


 そう言って、政倉コーチと離れる事になったが眠らせた奴は放置して行った。俺らで、近くにある椅子に座らせて昼ご飯へと移った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る