第15話 色欲

 俺の選択は間違っていなかった。奏ちゃんからも、凄く感謝される程の重大な選択だったので凄く安心してる。もし仮に、高目君を選んだとしたら奏ちゃんはどんな反応をしていたんだろうと思うと鳥肌が立ってしまう。


「まさ君、おはよう」


「おはよう」


 もうすぐ、新人戦なので緊張感が高まってくる。土日の間で、ダブルスに関しての打合せもしているが本来の新人戦はレギュラーに選ばれなかったので、相手がどう言う奴なのかは前代未聞である。


 すると、柴田先生が不機嫌そうに教室に入った。その背後には、同じクラスの原江さんの姿が見える。


「みんな、早く席に着いてくれ」


 クラスの皆んなが席に着いた途端に、柴田先生は原江さんの話をした。原江さんの両親が離婚して、母親の方に着いていく事になったので引っ越さなければいけなくなった。


 離婚の原因は分からないが、原江さんはいきなりの事で泣いているそうだ。柴田先生も、何もしてやれないと言う気持ちで大きいと思う。


 またしても、あり得ない状況がやってきた。生前では、この学校でチームを引っ張る程の実力を周りに叩き込んでいた。しかし、今ではその姿を見る事なく泣き顔を拝める事しかできなかった。


 気まずい雰囲気の中、学校も終わって部活に行く時間になった。奏ちゃんも、この状況が俺の経験してる状況下ではなかったので、俺の事を気にかけてくれていた。


「精神的に駄目になりそう」


「僕に何かできる事ある?」


「今度、奏ちゃんと遊びたい」


「分かった。今日、僕の家に来て」


 そんな感じで、心配してくれた奏ちゃんと遊ぶ事になった。こんな状況で、楽しく遊ぶ事ができるか分からないが遊んでる時だけでも忘れたい程の苦痛だった。


「もう知らない!」


 俺らは、遊べる楽しみを噛み締めながら部活の準備をしていると野田さんと安永さんがまた揉めていた。野田さんが、泣きながら部活に参加せずに帰って行こうとして安永さんが止めに走っていた。


 仲介役に回っていた権藤さんに聞くと、野田さんが付き合っている彼氏の悪い噂を聞いた安永さんは野田さんに別れた方が良いと説得した。しかし、順調だった野田さんは彼氏の悪い噂に耳を傾けたくなかった。それで、いざこざがあって今の状況に至るのだ。


「そう言う事だったんだ」


 権藤さんは、泣きながら俺に相談をしてくれた。俺は、凄く辛い立場の権藤さんを見て黙って励ますしかできなかった。


 今日は、権藤さんしかいない女子卓球部も混ぜての練習となった。そもそも、男子部員も俺と奏ちゃんしか来てないので三人でやれるような練習をした。


 最近は、田尻先生が見に来る事が少なくなっていた。岡本先生なら、三年生の担任なのでこの時期ぐらいから来れなくてもおかしくはなかった。


 時間が過ぎて、岡本先生が来てから部活が終了した。安永さんと野田さんの件は、俺から話す事にした。岡本先生も、その件については全く知らなかったそうだ。


「どこに行るか分からんのか?」


「多分、二人とも荷物を持ったままなので、そのまま帰ったのかと思います」


「だと良いが」


 日高の件もあるので、どうなっているのか心配である。日高の死から始まった、卓球部の負の連鎖から抜け出せないでいる。


 今日は、母親に頼んで奏ちゃんの家に泊まる事になった。明日も学校なので、準備を済ませて奏ちゃんの家に行った。


「はぁ〜、奏ちゃんに癒されたい」


 俺は、そう言って奏ちゃんの背中から抱き締める事にした。本人は驚いてるが、俺はそんな奏ちゃんも可愛く感じた。


「ちょっと、まさ君」


 俺は、黙って奏ちゃんをベッドに押し倒した後に恥ずかしがってる奏ちゃんの身体の匂いを嗅ぎながら抱き枕にした。


「それより、今回も未来を言い当てたね」


「まぁな。ニュースは、よく見てたからそれが役に立ったまでだ」


 俺は、またしても奏ちゃんに未来を言い当てた。今回は、世界テニスでドイツ代表の選手がドーピングをしていたと言う事件があった。そのニュースの詳細を覚えている限り、奏ちゃんに言ったので当たった時は凄く関心された。


「ちょっと……」


「可愛いな」


 俺の手は、無意識に奏ちゃんの下半身の方へと行っていた。すると、奏ちゃんの股間に硬い物があった。


「奏ちゃん?」


「これは違うの!」


 奏ちゃんは、俺の手を握って動きを止めた。まさかとは思うが、奏ちゃんは俺に興奮をしているのかもしれない。確かに、奏ちゃんは俺の事を恋愛対象として見ていると言っていた。俺も、奏ちゃんの事を可愛いと思っているし癒されている。そう思いながら、俺も興奮状態になっていると俺の股間も大きくなってしまった。


「やばい、この身体で精通はまだ迎えてないんだった」


「精通ってなに?」


 奏ちゃんは、俺の言葉に疑問を抱いていた。精通とは、繁殖するにつれて大切な機能の一つであり、初めて精子が身体の外に出る事を精通と言うのだが、奏ちゃんはその事を知らないでいた。


「まさか、本当に知らないのかよ?」


「うん。だから教えて」


 この年齢の時は、俺もまだ精通を迎えていなかった。しかも、生前ではそんな知識がなく興味本位で弄っていると出たので奏ちゃんと一緒に経験する事は安易ではない。


 だが、奏ちゃんは顔を近付けてくる。俺は、完全にキスを要求しているのだと分かったので奏ちゃんにファーストキスをあげた。


「初めてだから、優しくして」


 奏ちゃんも初めてのキスだった。俺は、生前では一度もキスや女性とのエッチな事はしていない。試行錯誤ではあるが、奏ちゃんと一緒に初めてを迎える事になった。

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