第13話 悪い夢
俺は、久原先輩が富永先輩に嫌がらせを受けている事にどうすればいいか分からないでいた。
富永先輩は、久原先輩と高目君と日高が嫌いであった。しかも、生前では俺も無視をされていた時期があったので心配をしている。俺は、そうやっていじめができるのはいじめられている奴が死んだりしてないからだと思っている。
実際、日高が死んだ事で喜んだりヘラヘラしている様子はなかった。だから、本当に死んだ事で笑い事では済まされないと思っているんだと感じた。
しかし、俺は富永先輩に何回か勝利した事がある。生前では、一度も無かったのに今では本人から最強認定されている程の勝利は納めている。
何とか部活が終了したが、自分から嫌がらせを止めに入るのは難しいと思った。だけど、久原先輩が可哀想なので舞谷先輩や俺が相手をする事になっている。折角、頑張ろうと辞めずに戻ってきたのだから富永先輩も仲良くしてほしいと思った。
それから、部活が終わって家に帰るといつもみたいに家事を終わらせた。そして、昼寝感覚みたいに寝具に入ると周りが黒い霧に覆われた。
そこには、死後の世界で出会ったおじさんが俺を眺めていた。しかし、いつもと状況が違った。おじさんも俺と同じく、黒い霧に囲まれており何かに縛られている雰囲気だった。
「政真よ、後は頼んだ」
「おじさん! 待ってください!」
しかし、おじさんは黒い霧に包まれてしまい姿が見えなくなった。俺は、何度も呼び止めたが動けない。何かに縛られているせいで、動けずにおじさんを助ける事ができないかった。逆に、怖くなって助けて欲しいとまで思った。
「奏ちゃん! 助けてよ!」
一番仲が良くて、大好きな奏ちゃんに助けを求めた。ずっと、叫び続けているが寒気を感じる。すると、奏ちゃんが目の前に現れて俺を助けようとしてくれた。
「奏ちゃん!?」
「まさ君、今から助けるね」
奏ちゃんは、ナイフを手にしており俺を縛っている黒い縄を解いてくれた。
「今すぐ、ここから逃げようね」
「お、おう」
俺は、黒い霧の中を奏ちゃんと手を繋いで走った。どこに向かってるか分からないが、とにかくその場から逃げようと必死である。
「き〜よ〜せ〜く〜ん!!」
すると、後ろから日高の顔がある化け物が俺の名前を呼びながら追いかけていた。奏ちゃんも、その姿を見て俺の手を強く引っ張ってくれた。
「何で日高がいるんだよ!?」
「まさ君! いいから逃げよ!」
「羨ましいなぁー!!」
トカゲみたいな身体をしており、鼻のあたりに日高の顔がある。食い殺そうと追いかけてくる化け物に、俺と奏ちゃんは急いで逃げた。
「お前さえ! お前さえいなければー!」
日高は、俺の方を見ながら追いかけてくる。死んだはずの日高が、俺よりも早く死んだ事が気に食わなかったんだろうと思った。
日高は、俺に何の恨みがあって俺に突っかかっているのか分からなかった。俺が知らない間に、気に食わない思いをさせているんだろうと思うがそれでもこういう姿で出てくるのは間違っている。
「辞めてくれよー! 俺が悪いからよー!」
「そんな事ないよ、まさ君」
俺は、泣きながら日高に許しを請おうと一生懸命に謝ったが日高は許す気もなく追いかけてくる。
「まさ君は、何も悪くないから」
奏ちゃんは、振り向いて俺の事を励ましてくれた。その顔は、とても優しくて頼りになる顔だった。
「僕がまさ君を守るから、安心して身を任してね。まさ君は、僕のヒーローなんだから」
奏ちゃんは、そう言って動きを止めた。日高が追いかけてくる中、奏ちゃんは俺を抱きしめてくれた。
「食い殺すぞー!!!」
日高が、俺らを食い殺そうと大きな口を広げてきた。しかし、奏ちゃんは俺を強く抱きしめたままだ。もう食われると思った俺は、奏ちゃんを抱きしめ返した。せめて、二人で食われれば怖くなんかないと思った。
「お兄ちゃん! ご飯だよ!」
「ぶはっ!?」
食われると思った刹那、妹の芽依香が俺を起こしてくれた。昼寝感覚で寝ていた俺を、晩ご飯前だからと言って芽依香が起こしてくれた。
「どうしたの? めっちゃ息が荒いけど」
「いや、悪い夢を見過ぎた」
俺は、この夢が何なのか分からずにいたが何かを訴えている感じがした夢だと思った。しかし、おじさんもあんな感じだったし、相変わらず日高も酷い人間なんだと思い知らされる夢だった。
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