第44話 注目の的

 俺らがいる福西中学校は、十年前に一度全国大会に出場していたと言う事が生徒手帳に載っていた。しかし、今では他校から弱い者扱いをされる程落ちぶれている。だが、俺には全く関係の無い事であり昔の栄光に縋る程の余裕が全く無い。


「おりゃー!!」


バシィィィィン!!!!


 俺は、二回目の新人戦に挑戦していた。俺らのチームは、Bグループに所属している。同じく所属しているのは、砂原中と魁中と桃池中の三校がいる。


 今は、桃池中との試合をしている。俺が一番で、二番に奏ちゃんが選ばれた。ダブルスを挟んで、四番に村部で五番にアジェフが選ばれている。


 相手は、菅谷すがやと言う奴である。俺は、菅谷とは生前の接点はないが熊田中の青田と接戦していたのを覚えている。


 菅谷は、俺と同じドライブ主戦型なのでスマッシュやドライブを積極的に仕掛けてくる。生前では、相手の攻撃についていけなかったので相手が攻撃する前に仕掛けたり攻撃させない様にしたりと戦っていた。


 だが、今では相手のスマッシュにも反応できる様にもなったし凡ミスをしなくなったと自己評価している。


 そんな感じで、一セットや二セットを軽々と勝ち取る事ができているので俺も本格的にチームの戦力として輝いていると実感した。


 ダブルスは負けたが、奏ちゃんや村部が圧倒的な差で勝ち取ったので三対一で俺らが勝った。しかも、桃池中だけでなく砂原中でも驚く程の大差で勝ち取った。


 砂原中は、この区の中で一番弱いので目崎とアジェフを中心に編成したが心配する事は無かった。


 最後の魁中だが、一個上の先輩達より実力がかなり劣ろいている。先輩達の代が結構強かったので、それからすると注意する程でもなかった。


 そんな感じで、Bグループの一位を勝ち取る事ができた。正直、こんな結果になるとは思いもよらず奏ちゃんと一緒にはしゃいだ。


「この調子で、優勝を狙うとするか」


「そうだね、まさ君」


「相変わらず、目立ってるわね」


 俺らは、楽しく昼休憩を堪能していると背後から芽依香が話しかけてきた。芽依香は、俺らの応援と言う名目で俺らの監視に来ていた。


 芽依香は、一位を獲得した俺らが注目の的となっているので心配している。特に、アジェフが目立っており他のチームの監督からも目をつけられる程だ。


 それから、決勝トーナメントの組み合わせが決定した。Bグループ一位の俺らは、銀竹中学校が一回戦の相手になった。


 銀竹中も、魁中と同じで俺らの代から実力が下がっている。先輩達の強いイメージが染み込んでいるので、かなり呆気なく勝利を収める事ができた。


 二回戦相手の熊田中は、中学からの経験者が集まっていると聞いてるが青田を中心に強くなっているので油断はできない。ただ、去年と同じで青田を警戒すればなんの問題もない。


 俺らからは、アジェフが一番に出場して奏ちゃんが二番に出場する事になり、四番に俺が選ばれて五番に村部が選ばれた。


 熊田中からは、一番に青田が出ており二番からは小車が出場している。ダブルス挟んで、四番に金子かねこが出場しており五番に新谷あらたにが出ている。


 しかし、アメリカ代表ともなれば青田の強さなんてちっぽけに思える。しかも、奏ちゃんやアジェフのお陰で俺達は強くなっている。そんな感じで、去年の新人選では勝てなかったが今年は熊田中に勝てる事ができた。


 こうなれば、後は決勝戦だけである。決勝戦の相手は、あのヤンキー校で有名な三郎丸中学校だった。


「やっぱり、こいつらか……」


 俺らは、十年も早良区のトップに君臨するチームに下克上を申し込む事になった。一番は奏ちゃんが出る事になり、二番はアジェフが選ばれた。そして、ダブルス挟んでからの四番に村部で五番に俺が選ばれた。


 相手は、一番に古賀が出ており二番に森が出る事になった。ダブルスは、今富と加茂田の二人であり四番に長谷はせが出場する事になった。そして、俺と戦うのは永留と言う奴だ。


「まさ君、あの人達って……」


「あぁ、田浦と連んでた奴だ」


 俺は、田浦の件を思い出した。一番の古賀と二番の森は、大会の個人戦で戦った事のある奴なので知っているが他の四人は別の件で知っている。あの四人は、俺と奏ちゃんの事は知らないと思うが俺らはあの四人がどう言う奴なのか知っている。


 長谷と言う奴は、奏ちゃんと肩が当たっただけで大金を請求してきたあのいかつい男だ。しかし、芽依香のお陰で長谷との接点は無くなったので奏ちゃんは俺の説明でしか接点はない。


 だが、俺の対戦相手である永留は温泉宿に居たあの永留と似ている。しかし、あの永留は一個上の先輩なので俺が思ってる永留とは少し違うのではないかと頭が混乱している。


 そう思いながら、俺は皆んなの試合を眺めていた。ダブルスは負けているが、奏ちゃんとアジェフは圧倒的に勝っている。相手も、ヤンキーだけあって威圧感がとても感じ取れる。どんなに負けていても、点を取った時の雄叫びは尋常じゃない。


 そんな感じで、奏ちゃんとアジェフは大差で勝ち取ったがダブルスは負けてしまった。そして、俺と村部の出番が回ってきた。


 対戦相手の永留は、ニヤニヤしながら俺と同じ台に向かっていた。永留と軽くラリーを交わした後に、勝負前の挨拶とサーブ権のジャンケンの為に永留と関わる事にした。


「俺の兄貴がお世話になったな」


「やっぱり、あの人の弟さんだったか」


「そうさ。俺は、この時を待っていた。俺のカッコいい兄貴が、くだらない拷問のせいで真面目の陰キャ野郎になっちまったんだからな」


「なら、お前もくだらない拷問を受けるか?」


「おいおい。強い味方が居るからって調子に乗るなよ」


「そうかもしれないな。だが、一番調子に乗ってるのはお前らだ」


 確かに、奏ちゃんが居るお陰で強気になっているのかもしれないが先に仕掛けてきたのは田浦に従っていた永留の兄貴だ。だから、鉄槌を下したまでだが言っても仕方ないと思った。


「とにかく、俺はお前を潰してやる」


「なんで、お前がその情報を知ってるのか分からないがこの試合は絶対に勝つ!」


 俺と永留は、睨み合いながらお互いの気持ちをぶつけ合う事になった。

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