第27話 温泉卓球
俺らは、日本で有名な旅館で三郎丸中の奴らと命懸けの戦いが始まった。俺のチームは、奏ちゃんと田浦君と一法師君の四人である。
相手チームは、三郎丸中学校のメンバーで固められている。田浦君から、相手の素性を詳しく聞く事ができたので観察がしやすくなった。
俺らに喧嘩をふっかけたリーダー格の奴は、一個上の先輩で
最後に、永留と大橋の後ろに居る無口の奴らは俺らと同じ学年である。一人は
勝負のルールとしては、先に相手のメンバーを全滅にした方が勝ちとなる様だ。例えば、一回目の勝負に勝った奴は次の勝負に挑まなければいけないと言うルールだ。
一回戦目は、「一法師VS大橋」である。ワンセットマッチで行われており、今は四対一で一法師がリードしている。
「変な事に巻き込んでしまってごめんな」
「まさ君は、悪くないよ。完全にあいつらのせいなんだから謝らないで」
奏ちゃんは、俺の手を握ってくれた。本当なら、二人だけで卓球やビリヤードを楽しんでいたはずなのに三郎丸中の奴らが入ってきた事でややこしい事になってしまった。
「僕はね、なんでこの関係がバレたくなかったかと言うと、僕達しか知らない関係になりたかったの。でも、まさ君は違うんだよね」
「ごめん。俺は、この関係がバレると一緒に居れなくなるんじゃないかって思ってしまった」
「大丈夫だよ。僕は、何があってもまさ君の味方だから」
俺は、奏ちゃんが思っている事が違う事に罪悪感が増した。奏ちゃんは、俺らしか知らない関係になる事で秘密の関係として俺を独占したいと思っていた様だ。
しかし、俺は奏ちゃんとの関係を馬鹿にされる事で一緒に居れなくなるんではないかと思ってしまった。今思えば、奏ちゃんの事を信用しきれていなかった。現に、俺らが負ければ奏ちゃんが大変な事になるので不安になっている。
そうしているうちに、一法師が大橋に勝利をして、次の加茂田にも連続で勝利を収めた。しかし、次の今富に負けてしまった。
「清瀬君達に出番は渡さへんで」
次は、田浦君が出てくれた様だ。田浦君は、鷲取中の一年生の中で一番実力があるので一法師も安心していられるそうだ。
「一つ気になったんだけど、あいつらって約束を守る気あるのか?」
「俺は信用しとらん」
「だったら、する意味あるのかよ」
そもそも、俺はこの試合に疑念を抱いていた。あいつらが、素直に言う事を聞くとは思っていない。しかも、一法師君は田浦君と裏で繋がっているのでは無いかと思った。
「二人は友達なんだろ? なんで、田浦君の事を疑ってるんだよ」
「俺と田浦は、そこまで仲が良くないんだ。しかも、この様子だとあいつらは田浦の差し金の様に感じる」
「確かに、あいつらが勝手に始めた様な感じだよな。それにしても、なんで二人でここに遊びに来てるんだ? 仲が良くないと二人では行かないだろ」
「あいつらに言うなよ」
一法師君は、俺らしか聞こえない様に小声で答えた。一法師君が、三年も付き合った彼女を奪う様に仕向けたのは田浦なのではないかという疑いを持っていた。それを、明らかにする為に今回の旅行に田浦と二人で行ったと言う訳だった。
「もし、それが本当であればお前の彼女を賭けた戦いもあいつが仕組んだ事になる」
「確かに、それなら辻褄が合うかもな」
一法師君は、この時の為にトラウマの過去を思い出しながらも田浦の疑念を晴らそうとしていた。確かに、この戦いも田浦君の言葉が発端である。
田浦君は、俺らを気にする事なく今富に勝利をして永留と勝負をする事になったが圧倒的な差に敗北をしてしまった。
「すまん。最後なのに、負けてしもうた」
「大丈夫だ。次は俺が……」
「まさ君、僕にやらせて」
「けど、奏ちゃんは……」
「お願い」
「分かった」
奏ちゃんは、俺の裾を引っ張って自分が出たい事を言ってくれた。少し不安に思ったが、奏ちゃんの目は永留を殺す気ではなさそうだった。
「良いねぇ。君とやりたかったよ」
「僕に勝てると思ってんの?」
「はぁ?」
その刹那、奏ちゃんは自分が持っていた卓球ラケットをぶん投げて永留の顔にぶち当てた。
「ぐはぁ!?」
その光景を見た俺らは、訳が分からず目を見開く事しか出来なかった。奏ちゃんは、ラケットを投げた後に卓球台を乗り越えて永留に殴りかかった。
「やめろ! 奏ちゃん!」
しかし、奏ちゃんは辞める気配は全くなかった。周りの人達は、止めに入ろうと動いたが奏ちゃんは襲ってくる人達を次々と気絶させた。
「あと、残るは田浦君と一法師君だけだね」
「尾崎さんは、一体何してんねん」
「君に本当の事を聞かなきゃいけないと思っててね」
俺は、奏ちゃんが先程の話を興味なさそうに聞いていたので大事を起こさないと安心していた。しかし、奏ちゃんは真実を知ろうとやる気であった。
「何が聞きたいんや?」
「一法師君の彼女を、他の男に寝取らせたのは君だよね」
「なんで、そんな事をせなあかんねん。人の恨みを持たれる様なめんどくさい事をする訳ないやろ」
「まだ、本当の事を言わないんだ」
奏ちゃんは天井に指を差した刹那、スーツを着た男性が複数人現れた。奏ちゃんが呼んだ男性達は、田浦君を押さえ付けたり気絶した奴らを何処かへ運ぼうとしていた。
「おらぁー!! なにすんねん!!」
「本当の事を言わないからだよ」
見るのに耐えれなくなった俺は、奏ちゃんを背後から突き倒した。
「やめてくれよ、奏ちゃん」
「僕はね、我慢ができなくなったの。まさ君との折角の時間を、こんなくだらない時間に付き合わされてイライラしてるの」
「俺も、大切な人を簡単に売り込んでしまった事に恥をかいてる」
「まさ君は悪くないよ。だって、あいつらが話しかけてこなければこう言う事にならなかったんだよ」
「これから、あいつらをどうする気だ?」
「二度と僕達の邪魔をしない様に拷問するだけだよ。だから、まさ君は安心して眠っててね」
その刹那、俺の後頭部から強い衝撃が走った。俺は、一度感じた事のある衝撃だったので耐えようとしたが抵抗できずにそのまま倒れる感触を感じながら意識が途切れた。
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