第40話 新入部員

 それから、新年度が明ける事になった。二年に上がった俺らは、廊下に貼られているクラス表を確認した。


「まさ君! また、クラスが一緒だね!」


「本当だ。やったな」


 俺と奏ちゃんは、二年二組の所に名前が載っていた。しかも、奏ちゃんの次に俺の名前があるので今度の席順は俺が奏ちゃんの後ろになった。


 ただ、生前の頃と違うのが村部が二組から三組になっていた事だ。村部は、二年で俺と同じクラスになるのだが、奏ちゃんがいる事で三組になったのだと予測した。


 しかし、他の人は全く変わってなかった。高目君と日高は一組だった。ただ、山本君は村部と同じ三組になっている。しかも、他のクラスメイトも生前と同じなので俺の予測は当たっていると確信した。


 それから、始業式や担任の発表も終わり俺らは教室に戻ってきた。俺の学年は、四クラスに編成されている。一組の担任は田尻先生であり、二組は家庭科の寺師丸てらしまると言う女性の先生だった。三組は、音楽科の奥平おくだいら先生であり、俺の元担任である柴田先生は四組の担任になった。


 ちなみに、男子卓球部の顧問であった岡本先生は南区にある平岡ひらおか中学校に転任したので男子卓球部に新しい顧問が来る。


 折角なので、俺は奏ちゃんに新しい顧問を言い当てる事にした。その顧問は、一年四組の担任になる数学科の小林こばやしと言う女性の先生である。しかし、部活勧誘期間にならないと分からないのでそれまでは結果待ちと言う事になる。


 時間が経って、部活の時間になると芽依香がコーチとして部活に来てくれた。その影響で、先輩達は部活をサボる事なく練習に励んでくれた。そのお陰で、田尻先生が来ても何事も無くその日が終わった。俺らは、奉仕活動を免れたので入学式を挟んでもしっかりと練習を行う事ができた。


 新入生の為に行った部活紹介では、部長と副部長が代表として皆んなの紹介をしていた。それから、部活の時間になると新入生の為に部活体験期間が一週間も設けられる。


 部活体験では、たくさんの後輩達が体験しに来てくれた。しかも、村部の紹介で西田光陽にしだこうようと言う後輩が体験初日から入部する事が決まった。


「まさ君、一人後輩ができて良かったね」


「あぁ、この調子で四人ぐらい集まると良いな」


 それから、部活体験期間が終了した。男子卓球部の顧問は、予想通りの小林先生になったので奏ちゃんから目を輝かせながら褒められた。


 結果としては、上出来である。女子に関しては、生前と同じメンバーの四人が入部をしたのだが、俺ら男子卓球部は入る筈のなかった後輩が入ってきてくれた。


「では、一人ずつ紹介していってくれ」


 田尻先生に言われてから、新入部員が先輩達の前で自己紹介をする事になった。まずは、体験初日から入部届を出してくれた西田から始まった。


 西田は、小柄ではあるが運動神経に優れている。入部届を出した次の日から、通常練習に参加しており基本姿勢や体力づくりを二年生全員で教えたので今の一年の中では強いと思う。


 次に、青木喜一郎あおききいちろうと言う後輩だ。青木も、体験入部に来てくれていた後輩の一人だ。少し癖が強い様に見えるが、アニメオタクなので俺ら全員とすぐに仲良くなった。


 三人目は、行實幸人ゆきざねゆきとと言う後輩が一歩前に立って自己紹介をした。期間最終日から来たが、青木と仲良くなったので入部する事を決意したそうだ。


 次の後輩は、都築純也つつきじゅんやと言う奴だ。基本は、無口で声を聴いたのは初めてだが素直で思いやりのある人だと言う事が体験期間中に感じた事だ。


 最後の一人は、目崎大地めさきだいちと言う後輩である。体験期間中では、一度も参加した事はないそうだ。しかし、卓球部には入る予定であったと言っている。目崎を見てると、何か違和感を覚えてしまう。


 だが、この五人も獲得出来た事は女子よりも人数が多いので感心している。新入部員は、先輩達が卒部するまでは基本練習や体力づくりに専念しなければならない。


 担当は、日高と山本君、高目君の三人が田尻先生に選ばれた。選ばれなかった俺らは、先輩達と通常練習に参加しなければならない。


 女子は、樺山さんと権藤さんがお世話係に選ばれていた。それと、奏ちゃんのせいで辞めたはずの武富さんが部活に復帰していた。


 それから、何事もなく一ヶ月経過した。世話係である高目君からすると、皆んな基本ができており見込みがあると言っていた。


 たまに、俺と奏ちゃんで担当していた時があったのだが皆んなで楽しそうに練習をしていたし、すぐに上達しているので台に入れさせても良いのではないかと思った。


 青木は、一年生の中でとにかく個性的で面白い奴だ。行實も、とても明るくて場を盛り上げてくれている。しかも、おじさんみたいな顔をしてるので皆んなからは親しみを込めて『おじいちゃん』と言われていた。


 都築は、無口でありながらも浮いている様子は無かった。しかし、目崎と西田は少し仲が良くなさそうではある。しかし、俺と奏ちゃんの前では素直に指示を聞いてくれている。


 俺らの時は、基本練習を中心に行っていた。基本の姿勢としては、前屈みにして台形を描く感じでラケットを振る。それが、できれば実際に壁当てをしてボールに慣れていく。


 他には、ボールを落とさない様にラケットの上でボールを弾ませる練習方法もある。目標としては、百回から二百回以上ボールを弾ませる事ができれば何も言う事はない。


 目崎と西田は、すぐに三百回以上弾ませる事ができていた。しかし、青木や行實が百回行くか行かないかで苦戦している。後は、都築が誰よりも下手で悩んでいるので担当である三人が徹底して教えていた。


 その調子で、一学期が終わろうとしていた。後輩達全員が、実力を伸ばしており戦術も田尻先生と話しながら決まったそうだ。


 西田と目崎、都築が攻撃型として俺らと練習をする様になった。だが、青木がカットマンの班で行實が中ペンの班に加わって練習をする事になった。


 俺の班には、班長の村部に高目君と西田、女子の板谷いたやさんがいる。板谷さんは、今年の新入生の中の一人である。俺は、この四人で一学期の練習を乗り越える事ができた。


 後は、先輩達が最後の中総体を乗り越えるだけである。レギュラーとしては、先輩達全員に加えて俺と奏ちゃんと村部の三人が選ばれた。


 そして、中総体当日になった。レギュラーに選ばれた俺ら男子卓球部は、肩を組んで輪になった後に部長の掛け声と共に気合いの一言を出し合う事になった。


「頑張るぞー!」


「「「おー!!!」」」

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