第23話 再会
日高と仲直りしてから数日が経過した。その間、俺が予言したネタが見事に当たったので奏ちゃんから未来人だと完全に信じてくれた。
「今日は、午後からあるんだろ?」
「そうだよ。部活が終わって、家で少し休憩してから行こうと思ってる」
「なら、俺も奏ちゃんの家に行くとするか」
俺と奏ちゃんは、一緒に卓球クラブの練習に参加する為に一度奏ちゃんと集合してから行く事が決まった。その時、俺が本来であれば二年の夏の時期にそのクラブチームに参加していた事を奏ちゃんに明かした。
驚いた奏ちゃんだが、疑った様子は一つも見せなかった。クラブチームのメンバーを、何人か言い当てる事で俺の信頼度は益々増え続けていった。部活も終わり、奏ちゃんの家で少し休憩した所で行く事にした。
そこは、卓球クラブチーム専用に造られた体育館の様だった。俺と奏ちゃんは、卓球専用の道具がたくさん置かれている建物に何の躊躇なく入った。
「おはようございます」
「あら、尾崎君おはよう。もしかして、隣にいる子が噂の清瀬君かしら?」
「そうですよ。よく気付きましたね」
案の定、そこには俺が標的にしている政倉コーチと言う名の清瀬芽依香が俺らの前に姿を現した。話し方も容姿も前回と全く同じなので、未来が変わってないかもしれないと不安が募り出した。
少し時間が経ってから、俺は政倉コーチに呼ばれて相談室に入る事になった。その間、奏ちゃんは先に練習に参加する事になったので着替えを始めている。
「清瀬君がこんな時期に来るなんて、予想していた時期よりかなり早いわね」
「二回目でも、同じ発言から始まるんだな」
「は? どう言う事なのよ?」
前回の芽依香は、この発言で俺との会話を独占した。しかし、もう同じ手が通用する事は無かった。しかも、俺が先に仕掛ける事ができたので芽依香は戸惑っていた。
「お前に呼び出されるのも、実は二回目なんだよな。俺の妹さんよ」
「なんで、分かってるのよ」
「一度、お前に殺されたんだ。だから、この時期にタイムリープしてきた」
「なるほどね、殺してはいけない人を殺しちゃったんだ。それで、恨みでもあんの?」
「正直、殺された感覚が不思議と全く無いし、お前を恨んでる暇も全く無い」
「殺された感覚が、無いのは理解し難いわね。でも、そんなに余裕がないって事は私がタイムスリップした理由を知ってるのね」
「あぁ、知ってるさ。しかも、その出来事は俺も阻止せねばいけないと思う」
「でも、一番手っ取り早い方法を私は知ってるわ」
「なに!? 本当に知ってるのか?」
「えぇ、そうよ。その方法は、男子卓球部が団体を組まずに廃部になる事ね」
「はぁ!? なんだそれ!?」
俺の驚いた声が、相談室に響き渡ってしまった。しかし、芽依香は表情を一つも変えずに俺から目線を外さなかった。
「兄貴が知ってるなら話が早いわ。私は、たくさん挑戦してきたの。その度に、絶望を味わってきたわ。だから、兄貴の夢を諦めさせたら良いと思ったのよ」
「仮に、俺が辞めたら本当に家族は無事に終わるんだろうな?」
「そんなの分からないわ。だって、今さっき思いついたのよ」
「なんだそれ? お前が無理だからと言ったから、わざわざ戻ってまで俺は日高の死を阻止したんだぞ!」
「それは、知らないわ」
「あ、そっか」
芽衣香が言うには、十月中旬に行われる新人戦で奏ちゃんと三郎丸中のいかつい男と揉めた後に奏ちゃんはその男を殺してしまった。それを見た俺を、気絶させて姿を眩ましたと言う前回と同じ出来事だった。
その話で気づいたが、日高の死を防いでも出来事が一緒なのでもしかすると奏ちゃんのせいで家族が崩壊した訳ではないと言う予測が脳裏を過ぎった。
「それを阻止するために、私は卓球クラブのコーチになって……」
「もう分かったよ。芽衣香」
今回の芽衣香も、俺が知っている情報と一致していた。しかし、一回目の世界で芽衣香が自ら阻止していたので必ず起きるとは心配していない。その事を言うと、芽衣香はこれ以上何も言えなくなっていた。
「とにかく、俺は部活を辞めずに願いを叶える様にするから芽依香も家族崩壊の阻止に尽力してほしい」
「仕方がないわね。やってやるわよ」
俺は、芽依香が提示した方法には賛成しない事と芽依香の目的には賛成すると言う事も伝えた。必ずしも、部活を続けたからと言って家族が崩壊してしまう事は無いと思っている。無事に達成できるルートが、必ず一つはあると思うからこそ俺は芽依香に協力を促した。
「これから、どうなるか分からないが絶対にお互いの目的を叶えてやる」
「私もそのつもりで行くしか無いわね」
それから、お互いの目的が揃った所で話し合いは終わった。相談室を後にすると、奏ちゃんは他の人達と楽しく卓球をしていたので前回みたいに飯倉コーチに襲われる事は無かった。
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