警察には第一発見者である会社員がいた。


会社員は震えあがって、言葉さえも出ない状態である。


ただ化け物だと繰り返すばかりであった。


彼を取り調べていた刑事は困り果てた顔をする。


「もう一度聞く。きみは……」


「うわああ!」


突然、外から悲鳴が聞こえてきた。


刑事は立ち上がると何事かと取調室から顔を出す。そして、仰天し腰を抜かす。


「来た! 化け物が僕を殺しにきた!」


会社員は声を荒くして叫ぶ。

刑事が見たものは会社員のいう化け物だ。

見た目は大きなサル。

その大きさは人の二倍はある大きさで牙が生え、眼の色は真っ赤である。


「ひいい!」


刑事は持っていた拳銃で大ザルを打つが、びくともせずに取り調べ室のほうへと向かってくる。


「たっ助けてくれ!」


刑事は恐怖のあまり逃げ去る。


大ザルは取調室のドアを壁ごと突き破ると会社員のほうへと歩み寄る。

会社員はイスごと引っくり返るとそのままずるずると後ろへと這う。



大ザルは会社員に襲いかかろうとした。


突然、金色のヒョウが現れ、大ザルに襲い掛かる。


大ザルはバランスを崩して倒れるが、すぐに体を起こし、ヒョウへと視線を向けようとする。


しかし、そこにはヒョウの姿はどこにもなかった。その代わり、ヒョウが降り去ったほうに一人の青年が立っていた。


「危なかったですね」


青年は会社員ににっこりと微笑むが会社員は呆気に取られていた。

大ザルは標的を青年のほうへと定めて襲いかかる。


「崎原くん!危ない!」


すると、ばんという銃声が響き、大ザルに光が襲い掛かる、驚いた大ザルはそのまま、地面へとたたきつけられた。


「大丈夫か? 崎原くん」


「大丈夫だよ。久坊くん」


大吾は淳也ににっこりと微笑む。


「それなら、ええよ」


淳也は大吾から大ザルへと視線を向ける。大ザルは起き上がる。


「手ごわいなあ」


大ザルは大きな口をあけると二人に襲い掛かるがうまく交わす。

その勢いか、大ザルは壁を壊して外へ出る。


「いまや! キョウ!」


「烈火!」


外側からの叫び都とも大ざるが突如として燃え上がり始める。


「があああああああ」


 大ざるはその炎を消そうとするかのようにのたうち回る。その勢いで大ざるの体がすぐ後ろにいた淳也めがけて倒れこんできた。


「うわああああ」


 淳也は慌てて後方へと飛び難を逃れる。



「久坊くん、大丈夫か」


「大丈夫や。けんど、もう少し要領よくできへんか?」


「それは悪かった」


 ぶち破られた壁のそとのほうから現れたのは恭一の姿だった、


 先ほどまで暴れていたはずの大ざるは炎が消えるとともに動きを止める。


「まあ、とりあえずは......。ん?」


 淳也は立ち上がるなり大ざるの方を見る。


 すると黒こげになっていたはずの大ざるが何事もなかったように立ち上がったのだ。



「なんか、大きくなっとらんか?」


「ああ。そのようだね」


 大悟の額からあせがながれてくる。



 大ざるをはさんで向こう側にいた恭一は黙ったまま眼を見開いている姿が見えた。


 すると、彼の背後から芦屋尚隆が姿を現しンと恭一の肩を叩きながら、「どうやら、炎系の『核』が着いているようだ」と大ざるを見ながらいう。


「どうするねん! リーダー!!」


「大吾!」


「はいよ!!」

 

 大吾が地面に両手をつけた瞬間、、突然、地面から土が噴出してきて大ザルに襲い掛かる。


大ザルは土に埋もれて動きは取れなくなってしまった。


「よし!」


四人は大ザルを囲むようにたった。


「ちぇ。間に合わなかったか」


ようやく駆けつけてきた健が愚痴ると、皆が振り向いた。


「そうでもないぜ。皆が『核』も楽に処理できる」

 

 尚孝は、得意げな笑みを浮べながらいった。


「どこがだよ。いつも、リーダーもっていくじゃんか」


 健が不満そうにいう。


「総攻撃でもかけるつもりかい?芦屋」


 大吾が楽しそうにいう。


「それもいいかもしれないな」


「そういうことなの?」


「そういうことらしいな」


「そういうことかよ!!」


 健がさらに苛立たしげに喚く。


 いつのまにか、六人は大ザルを囲んで陣を組んでいた。


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