ブレイク3

目覚め

少女はぼんやりと周辺を見回していた。


ここはどこだろうか?


なぜ自分がこんなところにいるのだろうか。


その疑問を解決しようと記憶を探るのだが、真っ白でなにも思い出すことができなかった。


そもそも記憶というものが彼女のなかに存在するのかさえもわからない。


「ようやく目覚めたんだね」


ぼんやりとしていると、だれかが話しかけてきた。


振り向くとそこには1人の男がすぐそばに佇んでいるではないか。


だれだろうと少女が首をかしげる。


「状況がわかっていないようだな」


男がため息混じりにいう。


「当然のことですよ。隠魑様」


すると、背後から女性の声がする。


少女が振り向くと女が近づいてくる。


少女は思わずあとずさんだ。


「大丈夫よ。私たちはあなたと同じ存在」


「同じ?」


少女は首を傾げる。


「そうよ。私もあなたと同じ。同じ血をもつものよ」


「えっと……」


「亜魍……。そんなことをいわれても混乱するだけだろう」


背後にいた男が口を開くと、少女のすぐそばにまで近づいた。


「申し訳ございません」


女は逆に一歩下がる。


男は少女の顔をのぞきこんだ。


少女は呆然と男の顔をみる。


「まだ、きみは目覚めたばかりだ。話はゆっくりとしよう」


「あの」


「いまはゆっくりと休みさい。魎火りょうか


その名を呼ばれた瞬間、突然少女に眠気が襲ってきた。


それが私の名前なのだと認識するよりも早く少女は意識を手放した。




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