この世とも思えない異形な姿をした『化け物』との闘いをひそかに繰り広げ、社会の安全を保つべくして、秘密裏に設立された警視庁所属の秘密組織のことだ。


  そのメンバーは年齢も表向きの職業も様々だが、メンバーがだれもが特殊能力を有していた。その一人であり、リーダーを務めているのは、表面上では警視庁捜査一課の所属している刑事・芦屋尚隆あしやなおたかだ。


「およびでしょうか? 警視殿」


 彼は警視庁に出勤するなり、海道安吾かいどうあんご警視に呼び出されていた、海道警視は、警視庁捜査一課の一課長を務めている人物で、将来的に警視総監にもなれると目されるキャリアである。


「ここに呼ばれた理由はわかるな」


 取り締まり室の一室を借りて、呼び出した海道警視と尚隆の二人だけ。こういう状況での頼み事と言えばひとつしかない。


「例の事件ですか?」


 尚隆がすぐに察した。


「ああ、先日起きたササラコーポレーションビルでのバラバラ遺体事件だ」


「聞いています。女性が社長室でバラバラの遺体で発見されたやつですね」


「ああ、目撃者の情報では、化け物が女性を食らったということだ。もちろん、事情聴取を受けた者たちはれも信じてはいない。錯乱したか。もしくは、彼が犯人かと伺っている」


「海道警視はそうではないと?」


「ああ。私はおそらく『核』が関係していいると疑っている。どう思う?」


「よくわかりませんね」


 尚隆は、調査資料に目を通す。


「まあ。やるだけのことはしてみます」


「もしも、そうならば」


「はい。秘密裏に解決します」


「よろしく頼む」


 尚隆はそのまま取調室を出ていく。


 取調室を出るとすぐの廊下には待ち構えていたように同期の海道ルリカ巡査部長の姿があった。


「そちら側の案件でいいのかしら」


 彼女は、封筒を尚隆に渡す。


「ああ、頼むよ。招集をかけてくれ」


「了解したわ」


 彼女は尚隆に背を向けて歩き出した。それをしばらく見送っていた尚隆は背伸びをする。


「さて。俺も行くか。まずは表の仕事を終わらせることだ」


 そう言いながら、視線の先には、表向きの仕事でバディを組んでいる刑事が手を振っている姿が見えた。


(ああ、またいろいろ聞かれるなあ。まあ、いつものようにごまかすさ)


 そう思いながら、彼のほうへと近づくと案の定、海道警視と何の話をしていたのかと尋ねてきた。だから、一言「プライベートな話だ」とだけ告げる。それだけでも十分理解されたのは、尚隆と海道警視の娘ルリカとは婚約者として知られていたからだった。


 

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