③
警視庁を出た尚隆は近くのビルの中へと入る入ってすぐある地下へと続く階段を下りていくと、ランプに照らされた『ウィザーハウス』と看板が目につく。そのまま、アンティーク風に飾り付けられた扉のドアノブに手を伸ばすと、慣れた手つきで開ける。すると、中からクラシックらしき音楽が響き渡る
「なんだよ。冷たいなあ」
「だって、嶽﨑はいつも私の心読もうとするじゃない」
扉を開けてすぐ右側にはカウンターがあり、それ以外にも三つほどのテーブルとソファーが並ぶ。いわゆるスナックかバーといった感じの店のようだが、そのカウンターでさっきから会話をしているのは、バーやスナックにくるにはあきらかに早いであろう未成年が二人。お互いに顔を合わせながら話している。
「そんなことしないよ。それにおれは心を読むんじゃないの。過去を見るの」
少年・
「どっちだって同じでしょ? プライベートに踏み込むのはやめてちょうだい」
少女・赤城詩歌が突っぱねるようにそっぽを向いている。
「そんな詩歌~。冷たいなあ。もう少し、俺のこと考えてくれよ。こんなに愛しているのに~」
証拠にもなく、健が詩歌に抱き着こうとした瞬間、詩歌は思いっきり健の頭を殴りつけている。
「まあ、まあ。」
それをなだめているのがカウンターの中にいる店員らしき男・崎原大吾が、苦笑いを浮かべながら、少年少女たちを落ち着かせようとしている。
「そうやでえ。仲良くしようや」
ソファに座っていた大人とはいえない年頃の少年・
「これから仕事だというのに、騒ぐな」
彼のすぐ近くに座る大学生風で気難しそうな男・寄田恭一が相変わらずだなあとため息を漏らす。
「そうやでえ。あっ、リーダーだ」
淳也が尚隆に気づくと、立ち上がるなり近づいてきた。
「リーダー。あいつらどうにかしてくれへんか? さっきからいちゃいちゃしよるんやあ」
「イチャイチャしてないわよ」
「イチャイチャだなんてえ。そんなあ」
断固否定する少女とは違い、少年のほうはすっかり鼻の下を伸ばしてニヤニヤしている。
「まあ、とりあえず、それは置いておく。今回の依頼内容だ」
そういいながら、尚隆が持ってきた封筒を見せると、そこにいた誰もが真面目な顔をしてこちらを見た。
「これが、今回に仕事だ」
そう言いながら、尚隆は封筒からプリントを取り出すと、一枚ずつ彼らに渡した。
「読んでいいのか?」
健が尋ねた。
「ああ。詳しくはそこに書かれている」
尚隆が説明している間に、五人のメンバーがプリントに目を通した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます