警視庁を出た尚隆は近くのビルの中へと入る入ってすぐある地下へと続く階段を下りていくと、ランプに照らされた『ウィザーハウス』と看板が目につく。そのまま、アンティーク風に飾り付けられた扉のドアノブに手を伸ばすと、慣れた手つきで開ける。すると、中からクラシックらしき音楽が響き渡る


「なんだよ。冷たいなあ」


「だって、嶽﨑はいつも私の心読もうとするじゃない」


 扉を開けてすぐ右側にはカウンターがあり、それ以外にも三つほどのテーブルとソファーが並ぶ。いわゆるスナックかバーといった感じの店のようだが、そのカウンターでさっきから会話をしているのは、バーやスナックにくるにはあきらかに早いであろう未成年が二人。お互いに顔を合わせながら話している。


「そんなことしないよ。それにおれは心を読むんじゃないの。過去を見るの」


 少年・嶽﨑健たけざきつよしがそう言った。


「どっちだって同じでしょ? プライベートに踏み込むのはやめてちょうだい」


 少女・赤城詩歌が突っぱねるようにそっぽを向いている。


「そんな詩歌~。冷たいなあ。もう少し、俺のこと考えてくれよ。こんなに愛しているのに~」


 証拠にもなく、健が詩歌に抱き着こうとした瞬間、詩歌は思いっきり健の頭を殴りつけている。


「まあ、まあ。」


 それをなだめているのがカウンターの中にいる店員らしき男・崎原大吾が、苦笑いを浮かべながら、少年少女たちを落ち着かせようとしている。


「そうやでえ。仲良くしようや」


 ソファに座っていた大人とはいえない年頃の少年・久坊淳也くぼうじゅんやがジュースをストローで吸いながらいう。


「これから仕事だというのに、騒ぐな」

 

 彼のすぐ近くに座る大学生風で気難しそうな男・寄田恭一が相変わらずだなあとため息を漏らす。


「そうやでえ。あっ、リーダーだ」


淳也が尚隆に気づくと、立ち上がるなり近づいてきた。


「リーダー。あいつらどうにかしてくれへんか? さっきからいちゃいちゃしよるんやあ」


「イチャイチャしてないわよ」


「イチャイチャだなんてえ。そんなあ」


 断固否定する少女とは違い、少年のほうはすっかり鼻の下を伸ばしてニヤニヤしている。


「まあ、とりあえず、それは置いておく。今回の依頼内容だ」


 そういいながら、尚隆が持ってきた封筒を見せると、そこにいた誰もが真面目な顔をしてこちらを見た。


「これが、今回に仕事だ」


 そう言いながら、尚隆は封筒からプリントを取り出すと、一枚ずつ彼らに渡した。


「読んでいいのか?」


 健が尋ねた。


「ああ。詳しくはそこに書かれている」


 尚隆が説明している間に、五人のメンバーがプリントに目を通した。


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