「リーダーは、記憶を消しているのかー?」


 警察からこっそりと出ると、何気に健がつぶやいた。


「たぶんね。なるべく、騒ぎを大きくしたくないみたいだしね」


 大吾がのんびりした口調でこたえた。


「でも、芦屋さんって、なんでもできるんですね。なんか、尊敬しちゃうなあ」


「俺もなんでもできるよ~」


「どこが・・ただのばかじゃない」


 詩歌に冷たくあしらわれて、健は落ち込んだ風に見せたが、詩歌は其れを無視した。


「それよりも、ここを早急に立ち去りましょう。ルリカさんがまっているし・・」


「え?なんやねん。あんさんら、ルリカはんにおくってもろうたんか?」


「そうよ」

 

 詩歌がいうと、警察署のすぐ前に一台の車が止まっていることに気付いた。

 車の窓を開き、ルリカが顔を出す。


「お!さすが、ルリカさん! 俺、尊敬しちゃう」

 

 健がふざけたような口調でいうものだから。ルリカは眼を細めた。


「あのねえ。嶽崎くん。あなたたちを送ったのは私よ」


「そうでした」


「なんやねん。おれたち、かけてきたっちゅうのに、あんさんらだけ楽したんかい」


「仕方ないだろう? 間に合わせたかったから」


「そうやけど」


「もめないの。帰るわよ」


「へいへい」


彼らは次々と乗り込もうとした。しかし、健がふいに別の方向へと視線をむけた。


「嶽崎? どうしたの?」


「うーん。誰かに見られていたような気がしてさあ」


 そういわれて、詩歌ちが後方を見るも特に日との姿はなかった。


「気のせいじゃないの?」


「そうや。もしも見られていたとしても、俺たちに興味いだかへんやろう。いまは戦闘中でもんないんやからな」


「あなたたち、早くのりなさい」


ルリカにうながされて健たちはワゴンに乗り込む。


ワゴンは警察署から発車した。




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