⑨
「リーダーは、記憶を消しているのかー?」
警察からこっそりと出ると、何気に健がつぶやいた。
「たぶんね。なるべく、騒ぎを大きくしたくないみたいだしね」
大吾がのんびりした口調でこたえた。
「でも、芦屋さんって、なんでもできるんですね。なんか、尊敬しちゃうなあ」
「俺もなんでもできるよ~」
「どこが・・ただのばかじゃない」
詩歌に冷たくあしらわれて、健は落ち込んだ風に見せたが、詩歌は其れを無視した。
「それよりも、ここを早急に立ち去りましょう。ルリカさんがまっているし・・」
「え?なんやねん。あんさんら、ルリカはんにおくってもろうたんか?」
「そうよ」
詩歌がいうと、警察署のすぐ前に一台の車が止まっていることに気付いた。
車の窓を開き、ルリカが顔を出す。
「お!さすが、ルリカさん! 俺、尊敬しちゃう」
健がふざけたような口調でいうものだから。ルリカは眼を細めた。
「あのねえ。嶽崎くん。あなたたちを送ったのは私よ」
「そうでした」
「なんやねん。おれたち、かけてきたっちゅうのに、あんさんらだけ楽したんかい」
「仕方ないだろう? 間に合わせたかったから」
「そうやけど」
「もめないの。帰るわよ」
「へいへい」
彼らは次々と乗り込もうとした。しかし、健がふいに別の方向へと視線をむけた。
「嶽崎? どうしたの?」
「うーん。誰かに見られていたような気がしてさあ」
そういわれて、詩歌ちが後方を見るも特に日との姿はなかった。
「気のせいじゃないの?」
「そうや。もしも見られていたとしても、俺たちに興味いだかへんやろう。いまは戦闘中でもんないんやからな」
「あなたたち、早くのりなさい」
ルリカにうながされて健たちはワゴンに乗り込む。
ワゴンは警察署から発車した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます