⑩
「はい、もしもし!」
『詩歌……』
「沙耶? どうしたの!?」
沙耶の声が普通でないことを理解した詩歌の声が自然とあせりを見せる。
その声に健たちの表情が固くなっていく。
『助けて……。助け……』
いまにも途切れそうな声が健の耳に響き渡る。突然電話が切れた。
「沙耶……? 沙耶っ!? もしもし! 沙耶!!」
「神崎がどうした?」
詩歌は、なにが起こったのか自分でも理解できない様子で呆然とした。
それをみて、健が詩歌の携帯を奪い取ると、耳に当てた。
「もしもし! おい!!」
しかし、携帯電話の向こうでは、ツーツーという音のみが響き渡っている。
「嶽崎……。沙耶になにかが……。どうしよう」
「俺に言われても……」
健が助けを求めるかのように尚隆に視線を向ける。
「サイコメトリーしろ、健」
尚隆はとしばし考えたのちにそう告げた。
「え? なにを?」
「その携帯だ」
尚孝は、詩歌の携帯を指差しながらいった。
「はっ? ちょっとまてよ!! リーダー。詩歌の携帯をサイコメトリーしてどうなるんだよ?」
「やれ」
「人の話きけよ!」
「そうや。意味わからんで。詩歌ちゃんの携帯みても、詩歌ちゃんの思考しかみえへんやろう?」
淳也はそういいながら詩歌の方を見ると、彼女は何を言われたのかわからずに困惑している。
すると尚隆が突然健の腕を握りしめた。
「俺はそんな趣味は……」
「勘違いするな。いいからやれ。俺が力をかしてやる」
尚隆の眼は真剣そのものだった。その眼はまるでなにもかもを見透かしているようにも見える一方で、内に何かを秘めているようにも見える。
どこまでもまっすぐでいながらも、どこか歪んでいるようにも見える。
「わかったよ!やりゃあ、いいだろう!!」
健は、仕方なく、尚隆に腕を握られた状態のままで、サイコメトリーすることにした。
サイコメトリーが終わるまでに、さほど時間をかけないうちに健ははっとしたように目を開いた。
「わかった!」
「え?」
「なにがわかったんや?」
淳也と詩歌は、眼を見開きながら健を見る。
いつのまにか、尚隆は健の腕を離していた。
「学校だ!!」
「学校?」
其れを聴いた瞬間、詩歌はすぐさま、店を飛び出した。
「あ! おい! 詩歌!!」
健もまたあわてて詩歌を追いかけていく。
「おい! あんさんら! なんも策もたてんで」
淳也が、彼女たちをとめようとしたが、それを尚孝が制した。
「なにするねん!? 」
淳也が叫ぶ。
「大丈夫だ」
「なにが大丈夫なんや?」
淳也は、怪訝な顔で尚孝を見た。
「久坊。おまえは、依田に連絡をとれ」
「は?」
「いいから、久坊と大吾は、依田と合流後に来い。いいな」
そういうと、尚隆は詩歌たちを追いかけて出て行ってしまった。
「なんやねん、リーダー!!」
「とにかく頼む」
「はあ、わかった。けど、俺アイツ苦手なんやけど……」
淳也は、意味がわからずに、不服に思いながら尚孝の言われたとおりに恭一に連絡をとった。
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