「どうしよう。ねえ、私、とんでもないことしたかもしれない」


 玲奈はすっかり怯えきっている。


 それも仕方ないことだろうと思いながら、大悟は後ろを振り返る。


 そこには古びた扉がある。扉は開かれており、木でできた戸がギーギー音をたてながら揺れている。その向こう側には暗闇が広がったいる。



「私……私たちはとんでもないものを見てしまったかもしれない。だから、みんな……」


 玲奈は大悟をまっすぐにみた。


 顔面蒼白でいまにも崩れ落ちそうだ。



「大丈夫だよ。大丈夫。きっと、大丈夫」


 大悟は思わず、彼女を抱き締めて落ち着かせようと背中を擦る。


 だけど、彼女の震えはとまらない。


 いや、彼女だけだはない。


 大悟もまた内心恐怖に刈られているのだ。


 見てしまった。


 そして、見捨ててしまった。


 大悟の視線の向こう側の暗闇から声が聞こえてくる。


 タスケテ


 タスケテ



 その声は大悟がずっと聞いていた友人の声だった。



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