Ver 2.22 真っ向から戦う事になった
結婚は簡単なもので書類に一筆入れて女神教に提出するだけだった
リタの分が終わるとカルラの分も終え、いつも通りの日常が続く
ちょっと味気ない
これなら結婚について意識が軽くなるのも頷ける気がした
ドリアルトを倒したら盛大にパーティするか
ケラウノス 執務室
リタ、クリス、トール、ヨハナ、カルラを呼び、打倒ドリアルトについて話し合うため集まった
「カルラ、今日集まったのはドリアルトを商人として倒そうと思ったからだ。商人同士の戦いってのがあるなら教えてくれないか」
「へ?そんなことするんですか?なんでまた…私のためでしたら気にしてないのでわざわざ危険な事をする必要ありませんよ」
「いや、俺たちも個人的に恨みがあってな…ドリアルトのクーラーは知ってる?」
「はい、私も利用しております。ずいぶん前にドリアルトが作った発明品ですよね?少々値は張りますが相当な需要を持つ商品ですよ」
「それ元は俺が開発したんだ、開発者名義をあいつに取られたんだよ」
カルラは驚き、眉をしかめる
「ハァ!?な…そ…それが本当でしたら貴族を通して訴えましょう!許されざる蛮行です!」
「まぁ…当時知識が無くてね、証明するものはない」
カルラは顎に手を当てぶつぶつと呟き始めた
「うーん…確かに…発明品であれば制作過程などを発表でもしていない限り誰のものと証明するのは難しいですね…」
「俺が開発したと証明するものがあるとすれば…あの装置には当時世界に存在しなかった魔法陣を分解して付与する術式がベースになってるはずだ。術式は俺が初めて利用し始めたらしいんだが…まぁそれも証明する手段はない」
「イズル様の未知の魔法ですね…確かに、あの複雑な機能を魔法陣だけで実現するのは不可能だったんです。温度や風量をツマミを回すだけで可能にしたのはあれが初です」
うんうん唸るカルラ
トールが口を開く
「商人同士の戦いでしたらこれと言ったものはありませんが、商品の流通権を握ってしまう事が最も手っ取り早いでしょうな」
「どうやればいいんだ?」
「地道に街の人たちと交流を持ち、より良い関係とより良い価格で提供していくことですな」
カルラが険しい顔のままイズルを睨む
「あまり褒められた方法ではありませんが、もう一つ、客を奪う方法もあります。大手の取引先でもある貴族を抑えれば大打撃になるでしょう」
「それは難易度が高そうだが…効果も高そうだな」
三大貴族のうちゴットゥムはケラウノスのスポンサーだ、こっちは近づきやすい
トロメンス家は当主と面識はないがビアスを頼れば会うことくらいはできるだろう
どうやって攻略するかはおいといても二つは手がかりがある
トールがため息をついた
「それは…本当におススメできませんな。ドリアルトであればそれくらいしても良い気になれますが強引すぎる手段は貴族たちの心象も悪うございます。ここはドリアルトに対抗する商会を立ち上げ、貴族たちの関心をこちらに向ける方法を取られた方がよいかと存じます」
「なるほど、貴族たちを敵に回す気はないしな…地道にやるほうがいいか。どのみち貴族の関心を奪えばドリアルトが損をするのは間違いない」
「左様でございます。そうと決まれば早速商会を立ち上げましょう。ケラウノス商会と名乗りましょうか、カルラ」
トールに呼ばれ、カルラは勢いよく席を立ちやるべきことを確認する
「はい!早速手続きを行ってまいります!ドリアルトが扱っている商品もリストアップし、三大貴族が好みそうな情報と商品の流通経路も集めてまいりますね」
トールが頷き、カルラが飛び出していく
「さすがトール仕込み…やること多そうだが…大丈夫か?」
「腐っても商人、情報の扱いは心得ておりますとも」
◆ ◆ ◆
翌日カルラに招集され、執務室に一同が集まる
今回はムラクモもいる
「皆さま調べてまいりました」
元気よく羊皮紙を広げるとカルラがひとつひとつ説明する
ドリアルトは貴族とのつながりが強く、平民にはほとんど品を卸していないようだ
主に日用品、化粧品、貴金属等の取引があり、貴金属類が最も利益がある
土地が限定されているこの世界での貴金属は非常に産出が難しく
鉱石などの産出量も既に枯渇気味なため価格も高騰しているらしい
貴金属だけでも抑える事ができれば利益の30%は削れるという事だった
イズルは説明を聞いて呟いた
「貴金属か…今まで貴金属が手に入る魔物なんていなかったしな…どうやって手に入れようか」
カルラも唸る
「そうですね、現在はほとんど使いまわしか所有者のいなくなったものを買い取り、装いを変えたりして流通しているものがほとんどです。鉱山などもあるんですがゲルマニアからは遠く、向かう冒険者もほとんどいません」
鉱山はあるんだな
空飛ぶ船が完成すれば採掘にも向かえるだろうけど…まだ建造中だし完成したとしても採掘のために使うかどうかはまた別の話だしな
トールが手を上げた
「少々危険ですが、冒険者ランク70ほどであれば倒せる魔物に貴金属、鉱石が取れるものがおります」
さすがファンタジー、そういうのを待っていた!
「どこにいるんだ?どんな魔物だろうか」
「少々遠いですな、馬車で片道10日はかかる距離になってしまいますが。泥や岩を肉体とするゴーレム達が住むダンジョンがございます。今や誰も見向きもしないダンジョンとなりましたが…」
ゴーレムか、泥はともかく岩は刃も通さないしそりゃあみんな嫌がるだろうな
静かに話を聞いていたムラクモが突然口を開いた
「そこなら行ったことがある。修行のためよく使っていた」
「え?刀で岩切るの」
「………」
小さくムラクモは頷いた
「さすがですね…普通そんなことしないと思うが」
「………」
(岩でも鉄でも斬れる)
「まぁムラクモの足なら確かにすぐに行って戻ってこれるな」
「ゴーレムなら僕が調達して来る。いずれ竜を斬る技を身に付けねばならないと思っていたところだ」
頼もしすぎるな
移動距離の事や道中の事を考えると今はムラクモしか頼れそうにない
「わかった。しばらくはお願いする、移動手段が確立したら人数増やせるようになるよ」
「………」
「連絡を取りやすいよう朝は必ず家にいるようにしてくれ。長旅になるようだったら連絡をくれると助かる」
ムラクモは小さく頷くと席を立って出ていった
「え、今から行くの?竜に手も足も出なかったし…悔しいのかな」
クリスが同意した
「あの竜を刀で斬ろうと思ってるところがすごいわね」
まったくだ
竜の鱗を取る時も躍起になってたな
流派の武芸に対して誇りがあるんだろうか
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