Ver 2.21 打倒ドリアルト商会

カルラがケラウノスへやってきてから3ヵ月が経った


すっかりクランに馴染み元気よく皆に挨拶をして回るため冒険者でもないのに皆に顔を覚えられケラウノスの看板娘とも言える存在になりつつある


トールの元で学んでいることもあり執事としての気遣いも一級品だ

飲み物なら欲しいと思う頃、口に出す前に紅茶が出てくるなどなど

なかなかの才能を発揮している


そんな彼女がいつになく元気がない

クランの皆も心配する声が多く応接室に呼んで事情を聞いた


「カルラ、最近元気がないと皆が心配しているんだが…何か問題があったなら聞かせてくれないか?」


カルラはため息をついた


「私事なので申し上げるのもはばかられるのですが…」

「気にせず言ってみてくれ。俺に解決可能な事なら手伝おう」

「可能ではありますが…何と言いますか…イズル様の意思次第と言いますか…」


よくわからんな…どういうことだろうか


「ハッキリ言ってくれ。どんな事でも驚かない、気がする」

「では…気を悪くなさらないでくださいね。以前よりドリアルト様に求婚されておりまして…一時期は父の力添えもあり話しを聞かなくなっていたのですが。独立した事をきっかけに頻繁に使いを寄こすようになりまして」


おぉ…女好きとヨハナも言っていたな

商会絡みの婚姻となれば権力狙いだろうか?

商人同士にも政治的なものがあるんだな


「簡単な解決方法があるとすれば…イズル様がリタ様と結婚して頂き、私を末席に加えて頂ければ手出しはしにくくなると思います。ドリアルトから逃れるためにイズル様を利用していると思われたくはなかったので言い出せず…」

「なるほど…言い出しづらいだろうな」

「もちろん、婚姻の申し出はイズル様にしかしておりません!決して利用したかったわけではありません。以前より噂は伺っておりまして、街の娘たちが噂話をする頃には私も惹かれておりました…お顔は何度も拝見していたのですが知り合うきっかけがなく…」


うなだれるように小さくなっていくカルラ

イズルは腕を組んで考える


会って数か月経つとはいえ一緒に冒険したわけでもないし

正直どんな娘なのかはよくわかっていない

でも相手がドリアルトだし俺を頼ってくれるなら力になってやりたい

しかもリタを立ててくれているなら特に問題もない気がするけど

これを理由に結婚するって言うのはちょっと不義理な気がしてならない

いちおうリタにも相談するか


リタを呼び、カルラの事情について説明した

ついでにクリスもついてきて唸るように話を聞いている

リタは話しを一通り聞いた後、イズルの隣に座った


「イズルはどうしたいの?助けてあげたい?」

「そりゃあね…相手がドリアルトだし。可哀想だと思うだろ」

「うん、あたしも思う。で、イズルはあたしと結婚したい?」

「そうだね…でもこういう形で進めるのはどうかと思って」

「じゃあ問題ないよ。あたしはイズルが好き、クリスもカルラもイズルが好き。みんなまとめて面倒見たらいいじゃん」


なぜクリスが混じっているのだ

男なんだが


「うふふ、リタちゃんは優しいわね。アタシの事は気にしないで、イズルちゃんの思うままにしたらいいわ」


クリスは申し訳なさそうに遠慮する


良識がある人で助かった

夜の相手をする必要がないなら別に構わないんだけどね

恩人だし、それでクリスが喜ぶならそうしてあげてもいい

そもそも男と結婚できるかどうか知らないけど


「男と結婚ってできるのか?クリスにはただならぬ恩がある。ケツを貸すのはちょっと遠慮したいが…面倒見るだけなら構わないと言えば構わないんだが」


クリスは号泣し始めた


「ありがとう…イズルちゃん…いろいろ書類とかを偽装すれば可能かもしれない。でもイズルちゃんの為に遠慮するわ。ケラウノスはもうそれなりに名前を知られるクランよ、何もしてなくても目立ってしまうわ。妙な言いがかりをつけられるような事はしたくないの」

「そうか…クリスも何か問題があれば遠慮なく相談してくれよ」


クリスは涙を拭き、リタの胸を見る


「ありがとう…強いて言うなら…女になりたいわ」


リタは申し訳なさそうに空を見上げた

イズルも目頭を押さえ、カルラは苦笑いしながらうつむいた


すまん、それは専門外だ


「う、うん…」

「冗談よ。ごめんなさいね、話しを続けてちょうだい」


クリスだけ可哀想な気もするな

いい人が見つかるといいんだけど


「わかった。カルラ、婚姻の手続きをしてくれ。リタと正式に結婚したらすぐにカルラの分も用意して欲しい」

「いいんですか?」

「リタもいいと言ってるしな。これくらいの勢いがないと俺も言い出せなかったし丁度いいよ。進めてくれ」

「ありがとうございます。リタ様も。では準備致します」


カルラは席を立ち、足早に去っていく


「ドリアルトか…因縁浅からぬ相手だが。そろそろお仕置きしてやらなきゃいけないか」


クリス、リタが頷く


「もう十分ドリアルトと戦うだけの力はあると思うけれど…ケラウノスの名前が売れすぎちゃって理由が無いと手を出しづらいわね」


それはあるな、今更クーラーの話しをしたところでどのみち証明するものは無い

強引に攻め込んで名誉が傷つくなんて事になったらもうケラウノスの方が不利益が大きい


「強引に殴りこんでもいいけど、そうするとクランのみんなが不利益被るよなぁ」

「そうね、あちらから手を出してきてくれればいいんだけど…」

「うーん、そうだ!カルラも来てくれた事だしさ、商人らしく戦うってのはどう?」


商人らしくか、それは面白いな

もし勝てればドリアルトは本業で負けたことになるわけだし悔しさも相当だろう


「面白そうだな。カルラにも相談してみよう」

「うんうん、やってみよう!」

「うふふ、アタシも参加するわよ。うんと懲らしめてやるんだから」

「そうだな、ヨハナも呼ぼう。楽しくなってきた」

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