Ver 2.23 強硬手段

ムラクモにより日々30体はゴーレムが持ち帰られるようになった

当たり外れがあり、ストーンゴーレムが金属類を含んでいる事があれば溶解させ、取り出すことが可能になる


一般的な解体場で処理する事ができないため

以前選定した新クランハウス用の土地で溶鉱炉を作り、そこで処理を進めている


この事業も完全にケラウノス独自の産業になりそうだ

ゴーレム類は足が遅いためほとんどタイフーンとして攻めてくることが無かったらしく完全にダンジョンは放置されている


ダンジョンが無限に生成する壁などを利用しているゴーレムなため資源が枯渇する事のない鉱山となった


◆ ◆ ◆


ケラウノス イズルの自室


気温が高いわけでもなく、低いわけでもない、月明かりの明るい夜

なんとなく眠れないイズルは少し散歩をしようとクランの吹き抜けに出た

例えようのない違和感を感じ、レーダーを使用するとカルラの部屋の前へ人影が3つほど確認できた


なんだこれは…夜這い?クランメンバーなわけないか…俺の妻でもあるのに大胆な輩がいるもんだ


急いでカルラの部屋へ向かうと黒いフードを被った男たちが武器を構えて扉を開けようとしている所だった


「追跡、拡散、魔力矢…行け!」


黒いフードを被った男たちは驚いて魔力矢を受け止める

一人が部屋に入り、残り二人が窓を割って外へ出る


「くそっ…カルラ!」


カルラの悲鳴が聞こえ、扉にたどり着くとカルラが男に短剣を突きつけられているところだった

カルラは必至で男の腕を掴み、ゆっくりと迫ってくる刃を見つめている


「追跡、魔力矢x5…離れろ!」


魔力矢を障壁で防ぐと男は窓を割って外に出ていく


「カルラ、皆を起こせ!俺はあいつを追う」

「は、はい!」


反発を駆使して黒いフードの男を追うと10分ほど追跡を続けるうちに街の外へ出ていった


ちょうどいい、街の中では家に当たるかもしれないから魔法が使いづらかった

ここなら逃げ場もない


「追跡、拡散、火球x6…行け」


3つに分かれた火球がフードの男を追うと魔力障壁で遮られ、火球が消える

さらに追跡を続け男が立ち止まると、イズルは囲まれていることに気が付いた


「あらら…しくじったな…囲まれてたか」

「ずいぶん余裕だな、不利なのはお前の方だぞ」

「そうかな?なぜカルラを狙った」

「言うと思うのか?頭は悪いようだな」


お約束のセリフだが言われると腹が立つな

しかし強がってみせたが実際に不利だ

ダンジョンでもない野外だと考えもなしに魔力を使うわけにもいかない

どこまで時間を稼げるか


フードの男たちはどこに隠れていたのか6人に増えている


一応戦闘らしきことしてるし、きっとトールとかリタとかが気づいてくれる事を祈ろう

ムラクモは家を建ててからそっちで寝泊りしてるので応援の望みは薄い


どうやって敵の障壁をかいくぐろうか…

障壁の内側で魔法を発動させればあたるだろうけど俺の身体能力じゃ難しい

結構っていうかもしかしなくても絶体絶命かもしれない

反発で浮いて時間稼ぐか


「反発・強…展開、続いて反発…展開」


イズルは大きく空中へ飛び上がり、強度の弱い反発術式の上に乗って男たちを見下ろす


「それで逃げたつもりかよ」


男たちは一斉に魔法の詠唱を始めた


やべーな、全員魔法の心得あるのかよ…


6人分の魔法が放たれ、反発で避けるイズル

フードの男たちはうまく連携しながら逃げるイズルを追い詰めていく

フードの男は息を切らしながらイズルに質問する


「おいおい、逃げるだけか?お前のその魔法なんか制限あるな」


そうですね…あります


「自由に魔法が使えないなら都合がいい、大人し死んでくれよ」

「そうはいかないな」


あまり反撃しないまま逃げられるのも癪だな

攻撃も織り交ぜながら逃げるふりをしつつ応援を待つか


「追跡、拡散x2、魔力矢x6…いけ!」


6つに分かれた魔力矢が黒いフードの男たちに襲い掛かる


「それくらいなら効かないんだよ!」


男たちは魔力障壁で受け止め、さらに魔法の詠唱を始めた


そうなんだよなぁ…

これが効かない相手となると完全に俺ジリ貧なんだよな

あまり高威力の魔法だと場の魔力が足りないしリタがいないと何にもできないな


「捕縛!」


男たちは攻撃魔法をやめ、拘束する魔法に切り替えた

イズルの手足は絡めとられ、身動きを封じられてしまった


うわ…幸い両手を合わせたままなのは助かったが

拘束系の魔法って障壁すり抜けるんだな


「逃げ回りやがって…観念しろ!」


男は短剣を振りかざし、イズルに迫る


「反発・強」


男に対して反発を使い、空高く打ち上げられた


「う…あぁぁぁあああ!」


術者が死に、イズルの拘束が解ける


なるほど、支援魔法なら障壁は反応しないんだな

仲間のサポートを妨害しないように作られてるってわけか

しかもこいつら浮遊する魔法を使えないみたいだ

そういう事なら、全員死なない程度の高さに打ち上げてやるよ


「反発・強x5…飛べ!」


男たちの足元に術式が展開され、打ち上げられていく


強度の調整はできないから飛ばす角度を調整して死なない程度に打ち上げてやった

足から降りれば折れる程度で済むだろうよ


フードの男たちはそれぞれが受け身を取り、腕や足を骨折していく

二人ほど着地する場所が悪く、岩などに激突して命を落とした


「まだやるか?」


両足が無事な者たちは逃走し、足をやられた者たちは置いて行かれた


「残ったのは二人か、拘束させてもらうぞ」

「くそっ…」


◆ ◆ ◆


しばらく待っているとトールとリタが現場にやってきた


「イズル!?大丈夫」

「ん?なんとか」

「よかった…」


トールが男たちの首元を検める


「バルムンクですな」


バルムンク?強盗殺人窃盗なんでもありだったっけ


「なんでそんなのがカルラを狙うんだ」


イズルは男たちの前へ座り、目を覗き込む


「おい、答えろ」

「言えば死ぬんだよ。答えられるか」


トールが男たちの首元を指差し、イズルも近寄って見る


「なるほど、刺青の上に魔法陣が書いてあるな」

「左様でございます。こやつらは依頼や拠点に関する情報を口にすれば肺が焼け、死んでしまいます。いずれイズル様の元にも現れるでしょう。殺したい奴がいたら言えと言ってきます」


という事はビアスのところにも来てるって事か

たしかに侵入の手口は鮮やかだったな

たまたま起きてなければ気づかなかったかもしれない


「この者らはどうされますか?バルムンクである以上の情報は得られないでしょう。私にお任せ頂ければ処分して参ります」


恐ろしいことをサラっと言うな

だがまぁ…放置しておくわけにもいかないな


「わかった。任せるよ」

「承知致しました」

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