Ver 2.02 ガチャ作ったら怒られた

トールからケラウノスでのみ販売する商品を作るべきだと助言を貰い


ケラウノスの執務室でクリスとリタ、トールとイズルがテーブルを挟み頭を悩ませている


イズルはトールに質問をする


「専用商品ってどういうのだ?」

「例えばケラウノスでしか手に入らない魔物の素材を使った商品、または以前苦い思い出がおありかとは思いますが、クーラーの開発者登録をしてしまう。などがありますな」


クーラーね…ドリアルトのやつ元気してるかね?

もう少ししたらぶん殴ってやるからな


だが希少な魔物の素材を使った商品、これはちょっと悪いことを思いついた

ガチャだ


元がゲームプログラマなのでとりあえず思いついてしまった

ガチャと言えば射幸心を煽り、コレクター心理をうまくくすぐる社会問題にもなった仕組みだ

希少な物ほど価値を高めるために販売数を押さえ、それを取得したものには多大な優越感が手に入る


ガチャの厄介なところは物理的に在庫が減ることが無いため永遠に同じ確率で引き続けなければならない事だ

俺は知っている、最初こそいいが1年も経つと特定のキャラ狙いで回せば当選確率が0.1%を下回る、永遠に

そのため300回引けば必ず当たるガチャなどいろいろ考案されていた


これにポケ〇ン的な要素を組み合わせてバトルカードゲームにしてやろう

肝心のガチャは魔道具にする

お金を払ってガチャを実行し、当たったキャラを交換できるようにする


キャラを増やせば需要が落ち込む事も回避できる

永遠に続く0.1%の恐ろしさをここで俺が実行する事になるとは思いもしなかった

無論作ったから必ず儲かるわけじゃない

そのゲームに人気が無ければ当然回す人もいないのだから

だが今はそんな仕組みもなければこの世界に娯楽なんてほとんどない

俺の一人勝ちだ


HAHAHAこれで俺は億万長者

なんでもっと早く気付かなかったのか


「わかった、ガチャ作る」

「「「ガチャ??」」」


仕組みを説明するとトールがすぐに案を出した

貴族や平民の間で流行っている物語をモチーフにしたものだ


早速感触を確かめるためにいくつかプロトタイプを作り、ガチャは格安の銅貨1枚で1回としてやってみた


簡単にヒットした

銅貨1枚だと子供でもちょっとした小遣い程度に貰う事もある

同時に当然社会問題にもなった


イズルが積み上げられた金貨で達磨落としに興じている時だった


「いやーこんな簡単に儲かるなんてなーマジすげー」


ビアスが不機嫌そうな顔をしてケラウノスにやってきた


「トール!イズル!出てこい!」

「はっ…」

「え?なんで怒ってんの?」


ビアスが吹き抜けのテーブルにドカッと座ると鋭い目つきでイズルを睨み、指でテーブルを叩く


座れと言う事か


トールと二人で席に着くと剣幕な表情で説教された


「領内で子供たちがお使いに行くとハズレキャラカードを持って帰るというクレームが多数寄せられている」

「うっ………」


イズルはパッと目を反らした


間違いなくガチャでしょうね


ビアスは低い声でイズルに語り掛ける


「心当たりがあろうな?イズル」

「はい、ございます……」

「トール?」

「はっ………」


ビアスは大きなため息をつく


「クランの財源確保のための新商品であろう事くらいは想像がつくが…ちとクレームが多い。販売は中止だ、異論はあるか?」

「ございません」

「はっ………」


どうしたトール…語彙が減ってるぞ

先日の偉大なトールはどこ行った


トールと二人でうつむいたままこっそりトールの顔を見ると冷や汗だらけだ

すまんな…こうなることは実は予想できてた


「案は悪くないが相手が貴族であっても販売は禁止する。貴族は領民の税で食っている、あのような物に金を吸われ続ければ領民が蜂起してしまうわ」


ぐぅ…やっぱこの世界でもダメだったか

せめて300枚くらいで確実に欲しいものが手に入るガチャにすべきだったか


「すまんかった」

「はっ………」

「わかればよい。このことは僕が片付けたことにする故これで終わりとする。本来はあちこちから取り締まりがやってきてクランの倉庫をひっくり返されることになるからな?責任もって回収、処分せよ」

「はい…」

「はっ………」


金貨1,000枚分は儲かったが回収と処分のためにほとんど無くなった

やっぱダメなものはダメな理由があるんですね

浅はかでした


「真面目に魔道具開発するか…」

「は…?真面目ではなかったのですか?」


トールが信じられないような物を見る目で俺を見た


「いや、真面目だったが…元の世界でもこういう事が起きたのは知っていた…まさかここでも起きるとは…」

「くっ…不肖…このトールそこまで見通す事叶いませんでした…己の未熟を恥じ入るばかりでございます……」


いやトールは悪くないんだけどね…マジごめん

まぁ俺もソーシャルゲーム開発するまでそんなに儲かると思ってなかった

実際作ってちょっとでもヒットすると数百人が余裕で暮らしていけるほど儲かるのに驚いたもんだ


まぁ、ゲームは所詮ゲーム、飽きが来るものなのでどのみちその栄光も長続きしないんですけどね

儲かってるのは本当に一部です


◆ ◆ ◆


後日またみんなを執務室に集めて需要について確認した


新しい魔道具を作るためだ


「ダンジョンの魔物の位置とかを把握できる魔道具を作ろうと思うんだけど必要?」


リタが食いつく


「めっちゃ必要だよ。魔導士がいないと見つけるのが難しい魔物だっている。なのに魔導士は長い訓練、または恵まれた才能による職業だから数が少ないんだ」


ほぉ、やっぱり必要か


「じゃあオートマッピングは?通ったところを記憶するような」

「それもできるなら必要!今は手書きだから精度もよくない、ただ場所によるね。ダンジョンの形が変わるような場所だとあまり有効ではないけど…それでも今いる位置が把握できるのは超重要」


まぁ遭難の危険性と常に隣り合わせだし当然だろうな

ちょっと前にいろいろ調べていたら空間把握、魔物感知、記憶と表示という魔法が存在する事に気づいた


この術式を利用して魔道具を作る

常に魔力を吸い続ける状況になる可能性にもなるので吸魔の術式も入れておきたいがあまり広めたくないので魔石の魔力を使って起動する形にする

皆が吸魔であちこちから魔力を吸えば俺が使う魔法の魔力が無くなりかねない


ささっと頭にあったイメージを紙に書き起こした

薄い青色で塗りつぶされた円盤状の画面に魔物の位置、現在いる空間の大きさを表示し、通ってきた場所も記録、更に仲間を振れさせることで色を分けて表示させる


FPS系のゲームによくある画面隅のミニマップみたいなものだ


「おーこれなら絶対売れまくるよ!あたしだったら買う!」

「そうですな…これほどまで細かい物でしたら命を買うのと同等の価値になるでしょう」


トールとリタが大絶賛する


ちょっとやりすぎたかな?ほんとにできるかまだわからん


「まぁこれから開発だからちょっと時間かかる、資金の心配はないかな?」

「先のガチャでの余りがまだ残っております。心配いりますまい」

「そうか…じゃあ俺はしばらくこれ開発する」


リタが少し寂しそうだ


「えー?冒険いかない?」

「あ…うん。ごめんね、気晴らしがしたくなったら言うよ」

「はーい」


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