Version 2 - 独立しました

Ver 2.00 クラン発足しちゃった

クランハウスを借りた翌日


3人で荷物運びを終え、朝食を取っていると入り口を叩く音がする


「誰だろ??」

「あたし出てくる」


リタが扉を開けると、ビアスとトールが立っている


ビアスとトールは一歩クランハウスに入り、一通り眺める


「あ、あの…どういったご用件でしょうか…?」


リタがおそるおそるビアスに伺いをたてる


「イズルに会いに来た」

「あ、はい。お待ちください」


リタに案内されると正面吹き抜け中央のテーブルにビアスとトールが座って待っている


「いらっしゃい。早速来てくれたのか」

「うむ、貴族同士であれば関わりあった者たちを呼んでお披露目会をするものだ」

「そ、それは知らなかった…すまんな」

「よい、知らぬのが当然だ。今回は用がある」


用がある?ビアスから…?クランに入らなかったことが気に入らないのか?


「トールをここに置いていく、手続き、狩り、情報収集、なんでも任せればいい。トロメンス家で最も優秀な執事だ。きっとお前たちの力になれる」


え?ビアスはどうするんだよ…


「いや…ありがたいけど…ビアスはどうするんだ?」

「グングニルはトールがいないくらいで潰れたりはせん。気にするな」


ちょっと冷たくない?トールそんな事言われて腹立たないの?


「トールはどうなの?あんなこと言われてるけど…」

「はい、私はビアス様の執事でございます。ご命令とあらば喜んでお手伝い致します」


あ、そう


「またいつものごとく唐突だな、なんでそこまでするんだよ」

「神託の話しもあったしな、友好の証だ。お前たちとは仲良くしておきたい」

「はぁ…お貴族様の豪快さは俺にはわからん、やりすぎじゃないか?」

「経営を甘く見すぎだぞ。その調子じゃトールが喜んでしまう事だろうよ」

「はい、腕が鳴りますな」


むむ…俺だって一応元の世界では個人事業主だったんだが…

まぁ一人だったし経験不足は否定できん


「まぁ…わかった。ありがたく手伝って頂くよ、俺たちはグングニルに対して何をすればいい?」

「神託の礼だと言っただろう。にわかに信じられないとも思える話だが辻褄が合う、ダンジョンを閉じる手がかりともなった。礼などいらん、これは僕から君たちへの礼だ」


ほんと清々しいほど強引で豪快だな


「そっか、じゃあ経営が軌道に乗ったら俺たちからも何か贈り物をしよう。友好の証としてな。それなら受け取れるか?」

「ふっ…楽しみだな」


ビアスは目を閉じ、偉そうにしながらもにこりと笑みを浮かべる


「用は済んだ、トール。後は任せたぞ」

「はい、お疲れ様でございました。こちらはお任せください」


ビアスは手を上げ、クランハウスを出ていった

トールはビアスを見送るとクランハウスに入るなり手を叩く


「はい、ではこれからイズル様に諸々やって頂くことを整理し、お持ちします。昼頃には山のような書類をお持ちするのでそれまでにクランのお名前を決めておいてください」


トールはそう言い残すとクランハウスを出ていった


「山のような書類…やだー」

「あっはは!盟主らしくていいじゃん!あたしも手伝うって」

「来ていただいてよかったわね。頼もしいわ」


◆ ◆ ◆


クランハウス 執務室


執務用のテーブルとイス、来客用の椅子がいくつかある質素な部屋で3人は顔を合わせる


「クラン名ってどうすればいいんだ?通例とかあるのか?」

「あるわよ。ほとんどのクランは神の武器から取るわ、グングニルなんて軍神オーディンの槍だもの」


なるほど、この世界にもそういう神がいるんだな

元の世界のファンタジー要素そのままっぽい


「他には、大きなとこだとフィルボア、住所不定だけどバルムンク、カラドボルグやミストルティンとかとか」


なるほどな、うちはどうするかな


クリスが手を挙げた


「アタシに案があるわ」

「聞かせてくれ」

「聞きたーい!」

「アタシたちって竜に関わりあるじゃない?神託とか。どうせ冒険者のクランやっていくなら竜をも倒すクランにしたいじゃない?」

「夢が大きいな」

「うんうん、倒したーい!」


不安気なイズルをよそにクリスもリタもノリノリだ


「で、竜と言えば飛行する姿を想像するじゃない?そして有効な攻撃と言えば雷や氷よね。だから…天空神ゼウスにあやかって雷を降らす武器、ケラウノス。なんてどうかしら?」

「カッコイイ!」

「壮大になった…」

「じゃ、決まりね!」

「決まっちゃった…」


なんか思いもよらずすごい大きな話になりそうで不安だが…

俺がやると言って始めた事だ、やれるだけやろう


「やれるだけやるか、ケラウノスでいこう」

「「やったー!」」


後はトールが帰ってきたら書類を手分けして片付ければいいか


「書類の山ってどれくらいあるんだろうな?」

「山って言うほどだし、いっぱいじゃない?」


せやな


「アタシはお店の準備するからそっちはお願いね。ごめんなさい、行ってくるわ」


さっそく一人いなくなった…


「じゃああたしも必要そうな家具買い付けてくるね、行ってきまーす」


あれ?リタも手伝うんじゃないの?そっち?書類は???


10分ほど呆けているとトールが戻って来た

文字通り山のような書類の量だ


5人ほど誰ともわからない人たちを連れてそれぞれが山のように積まれた書類を持って次々と執務室に入ってくる


「その量はやばいな…今日中に片付くのか?」

「まずはクランハウスの収益基盤を作ります、その他掃除や洗濯含め使用人の雇用。倉庫の借入契約、イズル様達がいない間の護衛や冒険者の募集要項、収集可能な魔物の素材の把握と売却先の店舗リストアップ、収益計算とクリス様の魔道具店仕入れに関わる注文票、その他クランハウスの見栄えなど重要なので調度品、美術品など見繕ってまいりました。ひとつずつ説明するので根気よく片付けていきましょう」


やばいもう頭痛い

二人とも早く帰って来てくれ


「明日からじゃダメ?」

「ダメです」


ほんと甘く見てたな…ありがとうビアス

きっとトールがいればうまく行くと思う

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