Ver 1.22 愛のキューピット

リタは言った通り添い寝してくれた

ちなみに童貞は卒業できていない


恥ずかしくて手がつけらんなかった

寝息が!肌が!触れ合う!!股間が痛い!!!


当然寝てない


添い寝は今後遠慮してもらおう

徹夜はしんどい


リタが目を覚まし、目を擦りながら起きる

イズルも同時に置き、ギンギンに冴えた目でリタの姿を見る


朝日に照らされ、艶やかに光る黒髪、しっとりと張りのある肌、寝ぼけた顔がかわいい

まるで絵画のようだ


幸せです、とても


「おはよう、イズル」

「おはよ…」


恥ずかしくて顔が合わせられない


「どうしたの?」

「いや…はずかしくて…」

「え…ちょっと…やめてよ」


二人ベッドに並び、お互いに照れる


ガチャ


「イズルちゃ~ん」


クリスがイズルとリタを見て目を大きく開き、筋肉が強張っていく


「な…あん…ど…はぁ?……」


最悪のタイミングだ、なぜ今日に限ってノックもせずに入ってくるんだ


それからクリスはしばらくクマのように吠え暴れまわった

落ち着きを取り戻したクリスに事情を説明し、誤解は解けた


「なによ。そんなことあるなら言ってくれなきゃ一線超えちゃったんだって思うじゃない」


そうですね、あの状況なら俺もそう思う


「別にいいのよ?健全な男女だしそういう事もあるわ。アタシだってイズルちゃん大好きだけどその気がないのは知ってるし、リタちゃんがいいならイズルちゃんと一緒になってくれたら嬉しいわ。でも…」


おいおいさらっととんでもない事言うなよ

意識しちゃうだろ、リタを


「アタシだけのけ者にされるのは許せないの!それだけは…やめてほしいのよ…」

「クリス…」


リタはクリスに同情し、うつむいた


「ごめんね、そういうつもりじゃなかったんだけど…」


クリスは苦笑いしながらも手をパタパタと振る


「いいのよ。誤解は解けたから…ちょっと早とちりしちゃったのはアタシの方だし…」

「ううん!なんていえばいいのか…ごめん」


クリスは小さなため息をついて、また話す


「で、実際どうなのよ。リタちゃんはイズルちゃんの事どう思ってるの?」

「え…?」


それは俺も気になる…気になるが緊張する


「それは…」


リタは顔を赤くしながらもじもじとイズルを見る

イズルはガチガチに固まって天井を見ていた


「はぁ…わかったわよ。初々しいじゃない、そんな調子じゃそんなことも無かったってのも信じるわ」

「ちょ!そんなことって…どんな事…?」


リタはもう額をテーブルにこすり付ける勢いだ


「勘弁してくれ…」

「ふふ、いいわよ」


イズルが消え入るような声で小さな悲鳴を上げるとクリスはようやく笑顔になった


「あんたたちどうせ相思相愛なクセに付き合うとか告白とかもしてないんでしょ?どうせなら付き合っちゃいなさいよ。今ここで」


イズルもリタもテーブルに額をこすり付けた


(いやいや無理無理無理無理、恥ずかしくて顔も見れんのに)

(そんな…正直ちょっと気はあるけど…今ここで?)


「あっはは!うらやましいわ。今日ここに来た本題に入りましょ」


イズルとリタはようやく顔をあげ、お互いを意識して目を反らす


「で、なんだよ…」

「神託の続きを聞きに来たのよ。昨日ビアス様とお話したんでしょ?さすがのアタシもビアス様の情報は手に入らないわ」

「あぁ…えーとな」


ビアスと一緒に聞いた神託の話を伝え、二人はほうほうと返事をする


「ふぅん、竜か…でも竜がダンジョンになっているのなら倒せば閉じるという事よね?長年誰もダンジョンを閉じる方法がわからなかったの。本当に世界を救えるかもしれないわよ?」


クリスがそう言うとリタも同調した


「そうだね、竜って言うくらいだし、強いんだろうけどさ。もしダンジョンが閉じれるなら本当に英雄だよ!?街を襲う魔物の数も減るんだし、領土だって取り戻せるかもしれないじゃん」


なるほど、確かに

まぁ女神の言う事だし嘘ではないんだろうけどここまで現実的な話になってくるとは

一気に希望が見えたような感じだな


「とは言え竜の戦力もわからないしどうすれば竜にたどり着けるのかもわからないな」

「そうねぇ…」

「うーん」


クリスが思い出したように話し出す


「ねぇ、イズルちゃん。今度こそクラン作りなさいよ、情報を集めるにしても軍資金を集めるにしても一人じゃ限界あるわよ。クランならイズルちゃんが動かなくたってそういう情報が集まるようになるわ」


なるほどなぁ…でも気が重い

なんか使命のような大きな責任がのしかかってくる気がして気が進まない

そんなことはないんだろうけど、最初はフリーランスと同じような感じだろうとは思う

こういうのって勢いなんだよなぁ


「いいじゃんイズル、やろうよクラン。あたしも手伝うよ?」

「うーん…手続きも何もわからんが…まぁ確かにタイミングとしてはいいな」

「でしょでしょ?えーっと…まずは冒険者ギルドで聞いてみる?」

「そうだな、そうしようか」

「決まりね、アタシは店をたたむ準備をするわ。資金面で困ったら呼んでちょうだい?支援するわよ」


おお、頼りになるな


「わかった、じゃあ早速行くか」

「うん」

「いってらっしゃい。新しい旅立ちね!」


この二人が一緒にやってくれるなら、とりあえず立ち上げるだけやってみるか


◆ ◆ ◆


冒険者ギルド


リタと二人でペトラのところへ行き、クラン立ち上げについて話を聞く


「クランの立ち上げですか?かしこまりました。名前はもうすでに決めてありますか?」

「え?あー名前か…まだだな」

「はい、では決まったら教えてください。クランの規模はどの程度となりますか?所属人数ですね」

「ん?まずは3人だけど…」

「かしこまりました。クランハウスは最低でも20人は生活できるレベルの建物となります。費用は金貨10枚です、毎月収めて頂きますが最初の半年間は無料です。それでよければすぐにご案内できますよ」


もう作るつもりで話進めてるな

まぁ作るんだけど、どういうものか聞きたかった


「お金はまぁ…あるんだがクランだとどうすればいいんだ?」

「経営ですか?クランによって様々ですね…5人ほどで細々生活してる方々もいますし、お店を経営してる方もいらっしゃいますし、グングニルのような巨大なものまであります」

「そうだな…わかった。まずはクランハウスを借りよう、そのあと考える」

「かしこまりました、では明日ご案内しますね」


◆ ◆ ◆


翌日 クランハウス 空き家


街の南、グングニルの拠点から少し離れた場所にクランハウスはある

大通りからは少し離れ、静かな雰囲気で2階建ての大きな家だ

周りには倉庫らしき建物が並んでいる

街の店舗が借りている倉庫だろうか


ペトラが家の前で止まると手を上げ、説明する


「こちらが今回ご案内するクランハウスです。既に掃除は済んでおりいつでも使えます。寝室20部屋、お風呂、トイレ、厨房、店舗や倉庫や応接室、執務室など一通りそろっているので活用してください、クランの名前が決まったらまたご連絡くださいね」


そう言うとペトラは去って行く

リタと一緒にクランハウスへ入った


「わ、結構大きいね」

「20人も生活できるならそうなんだろうな」


クランハウスに入ると左手には商店、正面には吹き抜けと受付、右手には1階に厨房、倉庫、風呂トイレが並び、応接室もある、2階は寝室と執務室だった


「とりあえず部屋決めて荷物運び込むか」

「そうだね、あたしクリス呼んでくる」

「そうだね、よろしく」

「はーい、じゃあまた後で」

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