Ver 2.26 竜の秘密と倒し方

「折角来たんだし竜についてもっと教えてくれよ」

「ん?……そうね、口外しないならいいわよ」


イズルは目を閉じて腕を組む


「んー…俺は嘘が下手なんだ…竜を倒す方法だけ教えてくれ」

「そ、じゃあヒントをあげるわ。竜魔石をよく研究なさい、この世界の竜の事は全てそこに書いてあるわ」


ん?この世界の竜…は他と違うのか


「竜鱗とか竜脈とかの事か?この世界の竜は他と違うのか?」

「あら、ちゃんと調べてるのね。竜鱗を無力化できればあとはぶ厚い鱗さえ何とかなれば攻撃が効くようになるわよ」


竜鱗を無力化か…術式を解読すればヒントが得られるだろうか


「もう一つの質問の答え、この世界の竜は他と厳密に言えば違うわ」


やっぱりか他の世界の竜を知らないので何が違うのかはわからないが


「おまけ、竜鱗含め竜に対抗するなら竜脈から得られた魔力を使わないと大した効果が得られないわよ」


それは最も厄介な問題だな

ファウルの竜魔石を手に入れなければ太刀打ちできなかったじゃないか

………てことは、竜を殺した者たちはどうしたんだろうか


「竜脈から得られた魔力しか効果がないなら竜を殺した者たちはなぜ竜が殺せるんだ?」

「簡単な事よ。竜の魔力をもってるの」

「………???」


どういうことだ…さっぱりわからん


「この世界に転生すると竜の魔力を持つのか?俺にも本来あったのか?」

「ハズレ、私が魔力を授けたとしても竜の力はなかったわ。その人たちは特殊な方法で召喚されたから竜の魔力を秘めていると思うほうが自然ね。その先はこの世界の根幹に触れるわよ」


む…それなら今知ってしまうと誰かに聞かれたときポロっと話してしまいそうだな


「わかった。とりあえず俺は竜鱗と竜脈を利用する方法を解析すればいいんだな」

「そうね、魔力を取り出す方法自体は既に知ってると思うけど…」

「ん?………吸魔の術式か」

「そうよ。竜の魔石からは無限に魔力が得られるわ。その魔力で竜鱗と竜脈の魔法陣を書けば同じ効果が得られるわよ。強力な魔力だから扱いには気をつけなさい」

「俺の魔力不足問題が解決するじゃないか」


ルトラは首を振る


「蓄積された量を全て取り出したら自然回復するまで取り出せないわよ。定期的に竜脈で魔力を補充してあげる事ね、最も、注ぎ込む方法はあんたが開発しないとこの世界にはまだ無いわよ」


なるほど、小さいが容量のデカい特殊な電池みたいなものか

現状だと魔石自体が発生させられる魔力量はそう多くないという事だな


「わかった。それだけわかれば今はいいや」

「そう、じゃあ次は私の番ね」


ルトラは目を輝かせ、前のめりにテーブルへ肘を乗せる


「ビアスか。あと数か月待てるか?」

「え?ここまで来てなんで焦らすのよ…」

「ビスに船を贈るんだ。ついでにお前もつけてやるよ」

「くっ…女神を何だと思ってるのよ…まぁいいわ、あんたのお陰で機会が巡ってきたんだもの。大人しく待つわ」


ルトラは目を閉じ、目を伏せた


しおらしくなったな


「そうか、うまく行くといいな」

「………調子狂うわね…私はあんたに結構ひどいことしたと思うけど…」

「もう問題は解消したからな、過ぎた事だ」

「フン…男らしくなっちゃって…」


ルトラはそっぽを向き、口をとがらせる


「結婚した男の魅力ってやつだ」


ルトラは諦めたようにため息をつく


「はいはい、奥さんを二人も抱える大旦那には勝てないわ。幸せになりなさいな」


ルトラは席を立ち、背を向ける


「じゃ、準備ができたらまた呼んで。待ってるわ」


ルトラは歩き出すと薄くなって消えた


今回は友好的に話しができたな

いろいろと有益な情報も手に入った

早速竜魔石の解析に本腰入れよう


◆ ◆ ◆


竜魔石から吸魔で魔力を取り出し、分解した竜鱗、竜脈へ魔力を与える

そもそもここから挫折の連続だった


今までは火球などの術式を吸魔で覆って魔力を取りこんでいただけだった

注ぐことができないし竜の魔力だけを吸収するのも無理だ


これを解決したのはヨハナだった


ヨハナがたまたま俺の部屋で研究の成果を披露していた時の事


「イズル、研究の成果を見てほしいの」


そう言いながら興奮しながら、ノックもせずにヨハナは俺の部屋へ入って来た


「前言ってた土地の魔力を増幅するやつか?」

「そう。吸魔と増幅は以前教えてもらっていたのだけれど、そもそも魔力が枯渇した土地にどうやって魔力を渡すか考えていたのよ。それが解決したことでいろいろとできるようになったわ」


リタに魔石を割ってもらうとかだろうか


「その名も注魔、単体では効果を発揮しないけれど吸魔と合わせて対象に魔力を注ぎ込めるようになったの」

「おお!それは便利そうだな」

「そうよ。土地の魔力を増幅するっていうのは無から有を生み出すようで難しかったのだけれど、大きな魔石に魔力を注いで蓄積する事ができるようになるわ」


なるほど、大型の電池か

魔力量が小さい土地にもよそからためた魔力を注ぐ事で増やせるって事だな


「すごいじゃないか。魔石の再利用にも繋がったりするか?」

「当然、正直再利用についてはあまり需要が無いと思うけど。可能よ」


これならあとは竜魔力だけを抽出できれば竜魔石に魔力を流し込むことができる

竜鱗や竜脈も使えるようになるな


「すごいな、まずはその魔力を蓄積する装置の開発者登録をしよう。注魔の術式は俺にも教えてもらってもいいか?」

「ええ、それはもちろん」


早速ヨハナの名前で蓄魔方という技術が登録され、飛空艇に転用した

飛空艇の魔石は大きく、さらに高価なため長旅以外の運用が難しい

これに吸魔と注魔を加えて飛行中に少しずつ魔力を補給する事で連続運用期間が3倍になった

休ませておけば少しずつ魔力を蓄えるので頻繁に動かさないなら永遠に稼働する事も可能だ


俺は別途、抽出という術式を開発して吸魔、抽出、注魔と並べて使う事で竜魔石から取り出した魔力を竜鱗、竜脈の術式に注ぎ、発動する事が出来た


一度発動してしまえば後は簡単なもので、巨大な魔力が竜脈によって産みだされる

それを竜魔石に蓄え、竜魔石からまた発動用の魔力を竜鱗と竜脈に回す


竜脈の魔力産出量が使用量を完全に上回っているので俺自身に竜脈と竜鱗を常時発動できるようになった

ただし、竜魔石を常に持ち歩く必要があることは当然の結果だ


さらに、竜の魔力は竜用の魔法陣にしか注げなかった

普通の火や風の術式には注げない

強大な力だと言っていたがなぜ注げないのかは今のところわからないままだ

今はこの結果で満足しよう

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