Ver 2.12 ムラクモ君は世継ぎが欲しい

ムラクモとの連携を試すためどこかへ狩りに行きたい


「トール、ムラクモが言ってた人狼ってどの辺にいるの?」

「ここから北東の山脈ですな、馬で行けば10日はかかるでしょう、馬車なら20日はかかるかと」

「え?そんなに遠いの?毎回そんな時間かけてるのか…」

「いえ、おそらく神速でしょう」


あぁ…そういう事か


ムラクモが口を開いた


「神速であれば半日で行って戻ってこれます」

「なんだそれは、そう思うと馬車って遅いなぁ。馬以上に早い乗り物ってないの?」


トールが首を振る


「ありません」


ワイバーンがいるくらいだから騎乗したりできると思ってたがそうではないのか


「ワイバーンて乗れたりしないのか?」

「大昔はそんなことができたと聞き及んでおりますが餌が確保できないので今は無理でしょうな。大量に家畜が必要となるでしょう、魔物の肉は冒険者次第で収穫が安定しないためアテにできませんし…」


なるほど、肉が少ない今飼うのは難しいわけか

こないだ解体したワイバーンの素材はなんか魔力を帯びているのかほのかに風を纏っていたな、飛行船とか作れないだろうか

腕試し程度なら別にそこまで遠くに行く必要はないがある程度敵が強くないと連携する間もないだろうし…


「トール、ワイバーンの素材ってまだある?」

「はい、ございます」

「船を作ろう、空飛ぶ船」

「空を…」


そうだな、原初のダンジョンを回るなら最低10人と言ってたし

10人が乗れて野営も可能な移動式キャンプくらいのちょっと贅沢な船がいい


「ワイバーンの素材を使った船に術式を施して浮かせられないかな」

「なるほど、竜種の素材を利用すれば風との相性もよいですな…ふむふむ」

「10人が乗れて野営も可能なくらいの大きさがいい」

「10人ですか…ちょっと相談してきましょう」

「頼んだ」


さて、時間もかかるだろうしムラクモと遊びに行く口実を作らないとな


「ムラクモ、何か欲しいものはあるか?」

「………」


神妙な顔をして腕を組むムラクモ

やがて顔をあげてイズルに顔を向ける


「嫁、ですね」


ヨメ!?

それは俺も欲しい


リタとヨハナが紅茶を吹き出し、クリスが急に色気づく


「うふ、アタシならいつでもオーケーよ?」


ムラクモはクリスに顔を向けるが表情がないままイズルに顔を向けた

クリス何事も無かったかのように窓辺に腰かける


「僕はムラクモ当主なので…子を作らなければならないんです」


あ、そういう

かわいい顔してるしすぐ見つかるんじゃないの?


「リタさん、ヨハナさんは決まったお相手がございますか?」

「「ええ!?」」


なにそれどうなっちゃうの


リタがもじもじしながら返答する


「き、決まった相手はいないけど気になる相手はいるというか…」

「ムラクモくんは若すぎるわね…私もちょっと…」


ムラクモは二人に頭を下げた

表情は少し険しい


「わかりました。ご返答頂きありがとうございました」


ちょっとホッとした…可愛いと好きは違うんだな


「ムラクモ結構焦ってる?」

「………はい、師は若い時にしておけと…僕を作った時は大変だったそうです」


ムラクモが15歳って言ってたからあの爺さん50超えてから子をこさえたのか

そりゃ大変だ


「元気な子が産める女性であれば誰でもいいんですが…」


そういう事は人前で言わないほうがいいぞ絶対騙されるから


「まぁ…いい人見つかるといいけどな。でも誰でもいいわけないからちゃんと選べ」

「………」

(選ぶ…何を基準に選べばいいのか…)


また黙っちゃったな…


「まだ焦るほどの歳じゃないから気長に待ちなよ。あとは年収重要だぞ?子供が産まれても育てられないんじゃ子供も奥さんも将来不安になるだろ。稼ぐ方法は知ってるか?」

「………」


ムラクモは首を振る


あの爺さん剣以外何も教えてないな…

トールと繋がりある割にあれほど質素な生活していたのもなんとなくわかってきた


「ま、まぁ年収は生活できる程度あれば…」


リタが焦りつつ説明する


「生活はお金がなくても可能です」

「え?…さすがにそれはまずい…かも?」

「普段何たべてるんだろうな…」

「野草、穀物等が中心ですが街の外に出て取ってこれますので」

「野草…稼ぐ方法を覚えたほうがいいと思う!きっと!」


ムラクモはしゅんとしてうつむいた


「じゃあまずギルドに登録しようか…ムラクモならすぐに問題ないくらい稼げるだろ」

「そ、そうだね…」


容量の多い魔力鞄といくらかの回復用道具を用意し、ムラクモに装備させてギルドへ向かった


◆ ◆ ◆


冒険者ギルド


ペトラにムラクモを紹介するととても可愛がられ、試験も難なく合格し登録が完了した


「試験官がもう嫌だって言ってましたよ?何したんですか?」


開始の号令と共に試験官の武器を弾き飛ばし

拾う度に武器を弾き飛ばしていたら心折れて拾わなくなったな…


「………特に何も……」

「?…そうですか。とりあえずこれで冒険者登録は終了です、リタさんとイズルさんは大先輩なのでなんでも聞くといいですよ」

「………」


ムラクモは小さく頷いた


「じゃあ早速狩りに行くか。ペトラ、このあたりでランク70って言ったらどこがあるかな」

「70の所へ連れていかれるんですか?登録したばかりですよ!?」

「あ、この子の師匠がいてね…既に一人で60は倒せるらしい」

「えぇ………そ、そうですか…70となると原初のダンジョンになっちゃうんですが…3人で行かれるんですか?」

「そのつもりだが…入り口でちょっと連携の確認するだけ…でもダメか?」

「せめてもう何人か魔導士を参加させた方がよろしいかと、あまりに酷い環境であるため常に何かしらの保護魔法を使ったまま進むことになりますよ?」


うそでしょそんなに厳しいの


「た、例えば?」

「死の雲と呼ばれるところなどは湖の下に火山がありまして、人が吸えない空気を放出します。ひとたび噴火すれば1週間は人間が立ち入ることはできません」


運悪く攻略中に噴火したら出るまでずっと呼吸を確保するための魔法を展開し続けないといけないのか…それはさすがに考えてなかったな


「それは…確かに厳しいな…」

「はい、グングニルでさえ10人以上で挑みます。ビアス様と面識があるのでしたらパーティ同士で協力するレイドを組まれるとよいかと」


なるほど複数のパーティをひとつのパーティのように扱うやつか

まぁでもムラクモ君との連携を確かめるためだけに組みに行くのもな


「わかった。連携確認したいだけだしちょっと考えるよ、ありがとう」

「はい、くれぐれもご無理なさらぬよう」

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