Ver 2.08 面接にやってきた冒険者がひどい

冒険者ランクが61になった事でそこそこギルドにも募集が来るようになってきた

まだ30未満の低ランクが中心だが、レーダーなどを安く手に入れてモリモリ狩りに行きたいという冒険者が多い


特産品というかそういうものを作るとそういう効果もあるんだな

金貨10枚程度の単価だし、低ランクにはちょっと高い

30なら洞窟中心だし地図はいらないだろうから魔物だけ映し出す廉価版でも作ってやろうか


トールによると低ランク帯は体験的な一面が強いらしくあちこち回る期間なんだそうだ

あまり期待しないほうがいいと諭された


以前面倒を見た女の子3人のパーティ、牙獣の巣で魔物を引き連れていたやんちゃパーティもいつの間にか所属している


今度こそうまくやれよ?


執務室でぼーっとしているとトールがやって来た


「イズル様、面接を行いましょう」

「え?誰の??」

「冒険者です。ランク50を超える者が来ております」

「そんなにランク高いなら問題ないだろ」

「いえ、力ある冒険者は総じて態度も大きくなるものです。しっかりと見極める必要がございます」


あ、そういうこと

トラブルメーカーになりやすいのね


「わかった…」

「応接室に待たせております。10人ほど見えているので順にこちらへお通し致します」


結構多いな

大蛇討伐が効いたのだろうか


一人目


アーロイス 男 18歳 騎士


「ちーっす」


ずいぶん若いのに50になったんだな


「やぁ、イズルだ」

「アーロイスだ、うちは5人パーティで俺だけランク50、他はまだランク40代だ。ケラウノスで働かせてほしい」

「得意な狩場はどこだ?」

「牙獣の巣が今はメインだな。俺の女がみんなまだ40代だからよ、怪我させたくなくってな。あんたも盟主ならモテるんだろ?貴族も後ろ盾に着いたって話だしさ、パーっとやって女並べて遊ぼうぜ?俺がいればいい女いっぱい連れてこれる」


お前はここをホストクラブにでもするつもりか

これはリタとクリスが聞いたら怒る、同席させなくてよかった


「そうか…お前の集める女たちは何ができる?」

「機嫌取りやら夜の共やらなんでもできるぜ」


風俗にするつもりなら自分でクラン作れよ

クランができたら行くわ


「わかった。検討しとくよ…ありがとう」

「いい返事待ってるぜ~」


しかしこれは危ないな、トールの言う通りだ


「トール、みんなこんな感じなのか?」

「ランク50を超えると指名依頼も来るようになり、二度目の反抗期と言いますか…調子に乗る時期なのですよ…グングニルも手を焼いております。ランク70を超えれば地に足を付けた者たちが増えるのですが…」


早く俺も70ならないとな

これが共通認識だと思われていると思うと俺もそんな目で見られてるって事だよな


二人目


ダクマクダ 女 32歳 治療士


「初めまして。イズル様」


お?今度は礼儀正しいな


「初めまして、イズルだ」

「ダクマクダと申します」

「早速だが志望動機とパーティの構成を教えてもらえるかな」

「はい、パーティは…今は組んでません。志望動機は…結婚したくて…理想の相手は年収が金貨1,000枚以上で高身長、やせ型、顔が良ければ性格は問いません」


結婚相談所行ってください

あと性格もこだわったほうがいいぞ


三人目


アンニエロ 男 27歳 魔導士


「初めまして、アンニエロです」

「初めまして、イズルだ。パーティの構成、役割を教えてくれ」

「はい、パーティは5人、みんなランク50代で私がリーダーです」


お、まともな奴が来たか


「志望動機は?」

「資金管理が得意なのでお任せ頂きたいです。ケラウノスの魔道具について研究し、安く提供できるようになると思います。また、改良して更に良いものにもなるでしょう。その際は私に開発者の登録名義を譲っていただきたいのです」


本音が漏れてるぞ産業スパイかよ帰れ


四人目


ゾルデ 女 22歳 魔剣士


「ゾルデだ。魔剣士をしている」

「イズルだ、珍しい職業だな」

「魔法は魔導士には劣るが使える、基本的には剣などに属性を付与して戦う剣士だと思えばいい」

「志望動機は?」

「鞍替えだ、フィルボアというクランから来た」

「へぇ、どうして鞍替えするんだ?」

「スパイしてこいと言われてな」


ん?


「お、うん」

「フィルボアは女性のみで構成されたクランなんだが、他クランとウマが合うかどうかわからんから先に私みたいに誰かが偵察に行って雰囲気を確かめるんだよ。それで、今回は私がケラウノスの調査に選ばれた」


正直ですね、好感持てるけど相手の気持ち読めないタイプかな?

なんでこいつを派遣してきたんだ


「ゾルデ自身は不満はないのか?」

「別に、あまりパーティを組むこともないしな」


てことはほぼソロでそのランクか、それはそれですごい


「得意な狩場は?」

「主に野外だ、セイレーンなんかが得意だな。男を惑わす唄を歌う魔物。知ってるか?」

「一応」


これは面白いな

ゴットゥムも喜びそうだ


「スパイの内容は?」

「冒険者達の雰囲気や性格を把握して報告するだけだ、だいたいランク50以上の定着するやつらを中心に。おたくの商品を荒らしたりとかはしない、いずれフィルボアと協力するかもしれないんだからな」


この娘は当たりだな

スパイだと言っているが大して害にならなさそうだし来てもらいたい


「男に抵抗はないのか?」

「フィルボアには男が苦手な者も何人かいる。だが私は気にしてない」

「いつ帰るとか決まってるか?」

「私の気が向いたら帰る、気に入ればずっとここにいる」

「いつからこれる?」

「ん?」

「採用するよ。いつから来れる?」

「え?…あぁ…いいのか…?」

「断わって欲しかったのか?」

「女と聞いて見下す奴は多いからな…その場で返事を聞けるとは思ってなかった」

「なら問題ないな、野外の知識があるのもいい。君が欲しい」

「う…あ…」


ゾルデは顔がみるみる赤くなっていく


トールは扉の前でその様子を眺め思う

(純粋な好意はよろしい、ですが気を付けませんとリタ様ににぎり潰されますぞ)


「た、たぶん。来週には…」

「わかった。よろしく頼む」

「……はい」


セイレーンとはあれか?女性の身体を持つ鳥のような魔物か

いやまぁ食べるとなったらちょっと気が引けるが…

流通していない魔物であることは間違いないしフィールドワークが得意でソロ中心ならきっと慎重な性格だろう


ゴットゥムへの土産役としては十分すぎるほどの能力だ

来てくれるといいな


その後は採用に至る人物は現れなかった

割とふざけたやつが多い


まぁ建前だけ立派で後で問題起こされるよりマシだからいいけども


◆ ◆ ◆


1週間後にはゾルデが合流した

イザベルという魔導士を連れて


志望動機はゾルデが危ないから、だと言う事だった

ゾルデと同じくフィルボアから来た


フィルボアにいたなら特に問題ある人物じゃないだろう


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る