Ver 1.10 遠回しな指名依頼

リタを庇ってイズルは炎の爆風を直接浴びてしまう


「薄くなっている今なら!魔力矢x10!!行け!!」


10個に及ぶ術式を直列させ、スライムの核へめがけて放つ

太く強力な魔力矢はスライムの核を見事貫き、巨大なスライムは溶けていった


「イズル!大丈夫!?」


リタがイズルの背中を確認すると自爆気味に放った火球の火を浴び、背中の服は焼け焦げ、皮膚が爛れていた


「うわっ…回復する!動かないで」


リタは座り込み、イズルの頭を膝にのせてうつ伏せにする

リタが手を合わせ、集中すると体が光包まれ手に光が集まっていく

両手を背中に当て、みるみるイズルの背中は元の状態に戻って行った


「ごめんね、あたしがドジふんだせいで」

「ん?うん…いいよ」


役得である

鍛え抜かれ丸く引き締まった太もも

もうちょっと痛いふりしてよっかな


「ねぇ、背中治ったよ?」

「ん?…そ、そっすね」


おっといけない感づかれてしまう


イズルが状態を起こすとリタが表情もなく俺を見ている


「太もも好きなの?」


バレテター!


「え…?いや、うん」

「……あたしこんなに手足太くなったのにそんなこと言うのイズルくらいだよ…」


リタは顔をうつむけ、照れるように右手を頬に当てた


あ、いかん、これは俺も恥ずかしくなってきた


「か、帰ろうかぁ」

「うん…」


◆ ◆ ◆


ゲルマニアの宿


イズルは自分の宿に戻り、ベッドの上に寝転がる


「リタが冒険者ギルドで換金できたとしていくらになるのかな。金額次第では装備もちょっと試したい事もあるし、術式ももっと増やしたいな」


スライムで属性的に有利不利があることは分かった

地形の魔力量を調べる術式も欲しいし

属性も増やしたい

威力も大中小と分けて魔石を管理したいところだ

そうなると魔石を取り出し間違えるみたいなこともあり得る

それを解消するアイデアがあるので試したい


「イズルー換金おわったよー」


リタが帰って来た


イズルは部屋から顔を出し、リタを迎える


「はーい、待ってたよ」


リタが部屋に入るなり魔力鞄を開けて中身をバラまくようにベッドの上で収納されているものを放り出す


「金貨10枚になったよ!スライムの魔石がすっごい高かった」

「え?そんなに?」

「うんうん、細かいのは全部で金貨4枚くらいだったんだけどスライムのが1匹で6枚になったんだー」


獲物が大きいとここまで値段があがるとは

さすが冒険者稼業すごい


「驚かれたよー、イズルがやったって言ったら明日ギルドに顔を出せって言われた」


あれ?


「それ俺怒られるやつじゃないかな」

「え?そうかな…」

「えぇ…またなんか言われるのかなぁ…」

「ご、ごめん。でもあの大きさの魔石のスライムだとどうやって倒したのか説明できなくて…」


確かに、魔法が無ければリタだと攻撃が届かなかった

仕方ないか


「で、あたしは金貨2枚でいいよ。残りはイズルが貰って」

「へ?なんで??」

「だってスライムはイズルが倒したし…」

「いやいや、リタがいなきゃ換金できないんだし半分にしようよ。取り分が不公平なパーティもあるかもしれないけど俺たちは二人で協力してかなきゃいけないじゃん。どっちかが不利益を受け入れるようなことしてたら長続きしないからダメ」


リタは口をとがらせ、どこともなく目を反らす


「な、長く続けてくれる気あるんだ…」

「そりゃまぁ…俺の身体能力じゃ受け入れてくれるのはリタくらいしかいないだろうし…大事にしていきたいと思うよ」


リタの耳が少しずつ赤くなっていく


「………」

「……ダメ?なの?」


リタはベッドの上で正座し、イズルを見据えた


「いいえ!これからもよろしくお願いします!」

「お?う…ん」


リタの不思議な態度に戸惑いながら、その日は防具を買い

二人で買い物を楽しんだ


◆ ◆ ◆


翌日


リタに呼ばれ、安宿で目を覚ますと指名依頼というものを貰って来た


「これあたし宛てなんだけど内容がイズル宛てなんだよね」


んんんん?

そんな手間のかかることをするのは誰だろうか


「依頼者はクリスだよ」

「なるほど、リタと一緒に居るのを知っているからか」

「そうだと思う、内容は魔力鞄の製作で100個」

「そりゃまた大きな取引だな」

「うん、5日後の朝には納品して欲しいんだってさ。材料はクリス持ちだって書いてある」


製作するにも工場が必要になる

クリスのとこいって話しを聞くついでに貸してもらえるか聞いてみよう


「わかった。まずは話聞きに行こう」

「うん、行こう」


◆ ◆ ◆


クリスの魔道具屋


扉をくぐると待ってましたと言わんばかりにクリスが出迎えてくれた


「いらっしゃい。まだ1日しか経ってないけど久しぶりな気がするわ」


どれだけ寂しがりなんだか


「すぐ近くの宿にいるんだけどな」

「ふふ、知ってるわ。一人立ちしたいから戻ってこないんでしょ?邪魔したくないじゃない」


まったくこの人は…どこまでもいい人だ


「遠慮せずに来てくれていいよ。今日は依頼を見て来たんだ。早速説明してくれないか」

「わかったわ、じゃ説明するわね。依頼にも書いてある通り魔力鞄の製作よ、100個。5日後の朝には納品だからお願いね、工場も自由に使っていいわよ。材料も既に全て工場に運び込んであるわ」


俺が欲しいものは全部知ってると言わんばかりの手際よさだな


「わかった。遠慮なく借りるよ、ありがとう」

「いえいえ、報酬は金貨50枚よ。頑張ってね」


やばいな、ダンジョンより稼げるぞ

まぁこんな大口の取引そうそうないが


「よし、任せろ。リタも手伝ってくれ」

「え?あ、歌を歌えばいい?」

「品出しとか整理とかでいいよ。気が散るから歌はいい」


リタはしゅんとしてうつむいた


「はい…筋トレはしていい?」

「はいはい…」


リタと共に工場に入ると懐かしい感じがする


昨日もここで働いていたのにな


「よしじゃあ始めるか。まずは1個あたりどれくらいの時間がかかるのか計測したいな」

「おっけーあたしが数える!」


◆ ◆ ◆


1つ目の魔力鞄を仕上げ、リタを見ると寝ていた


「筋トレさせてた方がよかったな…体感だいたい30分くらいだと思うけど…1日8時間働くとして…1時間2個だから1日16個だと6日はかかるな…ちょっとスピード上げなきゃ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る