黒と黄色
深夜。真っ黒な空の下、眩しい白い光が地上を埋め尽くしていた。その地上では、太さの異なるたくさんのパイプが張り巡され、様々な機械が、規則的に動き続けるのだった。それぞれの機械は単純な動きしかしていなかったが、全体的に見ると、とても複雑な動きをしているように見えた。
ある機械はひたすら地面を堀り続け、ある機械は何かを右から左へと動かし、ある機械は何かを細かく刻んでいた。何のためにそれをしているのか、知っている者はいなかった。
地上に張り巡らされたパイプは、太いもの、細いものが複雑に、長く繋がっていた。それが何の役割を果たすのか、知っている者はいなかった。
機械がどうやって動力を供給しているか、それを知っている者はいなかった。
その機械とパイプは、地上をびっしりと埋め尽くしていた。しかし、それに対して苦情をつける者はいなかった。
そんな地上に、たったひとつだけ、何の役割も果たしていない機械があった。いや、正確に言うと、もう役割を果たした機械があった。
それは、ミサイルの発射台。しかし、ただのミサイルではなかった。核ミサイルとは比較にならないほど、強力な新型ミサイル。かつて、戦争で破滅に追い込まれた国が、最終手段としてそれを撃った。しかし、相手国に対してではない。太陽に向かって撃ったのだ。戦争に負ければ、破滅だ。それなら、もう全てを巻き込んでやろう。そういう意図だった。
その新型ミサイルは止めれなかった。それが撃たれたとたん、どの国も自らの国を守ろうと、迎撃に備えたのだ。しかし、その新型ミサイルは上に飛び続けるばかりで、やがて、大気圏を突破した。その時、ようやく気づいた。恐ろしいことが起こったと。
すぐにその国に警告する。今すぐあのミサイルを止めろ、と。しかし、それは無理なのだった。撃った本人でさえ、止めれないのだった。
世界はパニックに陥った。世界滅亡。その時がやって来てしまう。
しかし、すぐにそれはおさまった。なぜなら、新型ミサイルが太陽に当たるまで、百年かかるからだ。自分たちが生きている間は大丈夫と知った人々は、また普段の生活に戻った。
しかし、一部の科学者たちは違った。なんとか太陽が消えた後も人々が生活できるように試みたのだ。
機械で地中深くのマグマを堀り出し、マグマの暖かさをパイプを通して世界中に届ける。これができれば、地球が氷で覆われることはないはず。
その計画は大急ぎで進められた。何しろ、百年しかないのだ。全ての技術がそこへ使われた。
そして、九十九年の時間がたった。ついに全ての設備が整う。ぎりぎり間に合った。誰もがそう思った。
しかし、間に合わなかった。紙一重で間に合わなかった。電源を入れ、機械が動きだそうとしたその時、太陽が爆発した。つまり、新型ミサイルが太陽に着弾したのだ。
その瞬間、太陽は粉々に吹き飛び、地球に光は来なくなった。生き物は全て死んでしまった。
ゆっくりと地球は氷で覆われていったが、やがて、機械がその役割を果たし始めた。地球を覆う氷から湯気が出始め、溶けていった。そして、地面が顔を出した。しかし、その時には、もう人類は滅んでしまっていた。
そうして、今も機械はただただ動き続けている。全ての生き物が死滅してしまった地球だったが、最近では、小さい生き物が誕生した。やがてそれは鳥になり、猿になり、人になるかもしれない。その時、人はこの機械的な地上を、どう解釈するのだろうか。
太陽が滅んだ今、もう日の出は来ない。しかし、その代わりに、朝が来たはずの時間に人工的な光が空を黄色く染めるのだ。
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