もたらされた文明

 これほど急速に文明が発達するなど、誰が予想できただろうか。彼の出現は突然で、何の前触れもなかった。円盤型のアルミのような質感のあるその飛行物体は、ダンスを踊るようにゆっくり回転しながら都会の交差点中央に着陸した。すぐに飛行物体の周りを軍隊が包囲網を作り、その後ろに親善大使が待機し、さらにその後ろに毒ガス部隊が並んだ。一同が緊張に包まれる中、突然飛行物体の入口は開き、中から宇宙人が現れた。見た目はタコのようだが、その胸を張った歩き方、落ち着いた視線などから知性を感じられた。

 タコのような宇宙人が何やらリモコンのような機械をいじくりまわすと、彼の持つその機械から音声が発せられた。

「わたくしは遠い銀河系から来ました、ターコ星の使者でございます。わたくしの目的はひとつ、あなた方人類の文明を向上させることでございます。敵意はございません。友好的な関係を築きましょう」

 地球側はこれを聞いてひとまず安心し、ターコ星人の元に親善大使がよこされた。しばらくの他愛ない会話の後、ターコ星人は見返りもなく様々な技術を提供してくれた。遥か先の銀河系までも一瞬で行ける円盤型宇宙船、どんな未知の言語も一瞬で翻訳してくれる万能翻訳機、常に文明の進歩に役に立つアドバイスをくれる人口知能、それらの設計図をくれた。親善大使は目を丸くしていった。

「これほどまで発達した技術をお持ちであるとは。人類はあなた方ターコ星人の力を借りずにこれらの装置を作ることはできなかったでしょう。素晴らしい文明の高さです」

「我々もこれらを作った文明の高さには驚くばかりです」

 親善大使はターコ星人の言葉に眉をひそめた。

「あなた方ターコ星人が作ったわけではないような言い方をしますね」

 ターコ星人は頷いた。

「その通りですよ。我々がこれらの装置を作ったわけではありません。ある日突然、この円盤型の飛行物体がターコ星に現れ、中から出てきたイカのような見た目をしたやつが教えてくれたのです。すごい技術ですね、とイーカ星人と名乗る彼に伝えると、彼もイーヌ星人というやつから教えてもらったというのです。そして、彼はこう続けました。この技術をまだ持っていない他の惑星に届けてほしい。また、その際にこの技術をさらに他の惑星に届けるよう伝えてほしい、と。どうやら、この一連の流れがずっと繰り返されているようなのです」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

悪の味方 峻一 @zawazawa

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説