順位

「君は本当に欲がないな」

 仕事の昼休憩。その男は同僚にそう言われた。

「そうかな」

「そうさ。皆出世したがって、必死になってる。そんな中、君は少しの焦りも見せない。営業成績だって、君は下から数えた方が早いってのに、落ち込む様子もない。気にならないのかい」

「気になるって、何を」

「順位さ。あいつより上だとか、あいつより下だとか。君からは異様なくらい競争心が感じられない。不気味だよ」

「競争心ならあるさ」

 男は笑って見せた。


 夕方。男は仕事を終え、電車に乗り、都会から離れた静かな町に着いた。そして自宅としていた家に着くと、次は山奥に向かって車を走らせ、隠しておいた宇宙船に乗り込んだ。満点の星空の日、宇宙船は静かな町から静寂の宇宙へと飛び立った。

 彼は宇宙船の舵を取りながらつぶやく。

「近頃、文明を発達させてきている地球という星の偵察をしてきたが、地球人というのは仲間同士で競い合う性分らしい。ひとつの惑星の中だけで暮らしていれば、それも無理ないことかもしれないが……。我々は仲間内で順位を競ったりはしない。宇宙の果てしない広さを身を持って知れば、それがくだらないことだと、彼らも気づくのだろうか」

 彼は地球から遠く離れた銀河系へと到着する。その間にも、宇宙の至る所では、新しく生まれる惑星もあれば、死にゆく惑星もある。

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