順位
「君は本当に欲がないな」
仕事の昼休憩。その男は同僚にそう言われた。
「そうかな」
「そうさ。皆出世したがって、必死になってる。そんな中、君は少しの焦りも見せない。営業成績だって、君は下から数えた方が早いってのに、落ち込む様子もない。気にならないのかい」
「気になるって、何を」
「順位さ。あいつより上だとか、あいつより下だとか。君からは異様なくらい競争心が感じられない。不気味だよ」
「競争心ならあるさ」
男は笑って見せた。
夕方。男は仕事を終え、電車に乗り、都会から離れた静かな町に着いた。そして自宅としていた家に着くと、次は山奥に向かって車を走らせ、隠しておいた宇宙船に乗り込んだ。満点の星空の日、宇宙船は静かな町から静寂の宇宙へと飛び立った。
彼は宇宙船の舵を取りながらつぶやく。
「近頃、文明を発達させてきている地球という星の偵察をしてきたが、地球人というのは仲間同士で競い合う性分らしい。ひとつの惑星の中だけで暮らしていれば、それも無理ないことかもしれないが……。我々は仲間内で順位を競ったりはしない。宇宙の果てしない広さを身を持って知れば、それがくだらないことだと、彼らも気づくのだろうか」
彼は地球から遠く離れた銀河系へと到着する。その間にも、宇宙の至る所では、新しく生まれる惑星もあれば、死にゆく惑星もある。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます