メディアの星
「まったく、一時はどうなることかと思った」
広大な宇宙。操縦機器が故障し、操作困難に陥ったその宇宙船は、波に任せて揺られるように、ふらふらと力のない移動を繰り返していた。救助信号はどこかの惑星に着陸し、静止した状態でなければ正確な位置を故郷であるマハ星に送ることはできない。彼らは果てしない時間、宇宙船を進ませ続けたが、まったく着陸できそうな惑星が現れなかった。二人のマハ星人はこの不幸な運命に絶望することしかできなかった。もう故郷には帰れないと諦め始めたそんな時だった。着陸可能な惑星をレーダーが発見し、電子音を響かせた。その時の電子音は、二人にとって祝福のベルのように聞こえた。
言うことを聞いてくれない宇宙船を必死の思いで操縦し、何とかその惑星に近づいていった。そして着陸態勢をとり、ゆっくり、慎重に近づけていく。マハ星人の操縦の腕に狂いはなかった。しかし、故障した宇宙船の方には狂いしかなかった。宇宙船は激しく態勢を崩し、二人を乗せた宇宙船は激しく地面に衝突。宇宙船自体に破損はあまりなかったが、二人のマハ星人は強く急所をぶつけ、死んでしまった。
突如として現れた宇宙船。そして着陸を失敗させ、不幸にも死んでしまった二人の宇宙人。それは、その星に住む彼らにとって非常に興味をそそられるニュースとなった。すぐにその宇宙船の周りにメディアが集まり、連日その様子が放送された。宇宙船の故障していた状態から、なんとか必死の思いで宇宙船で地球に着陸させようとしたこと。その時の彼らの不安であったであろう心情について。また、宇宙人を解剖した結果から、どんなものを食べ、どんな生活を送っていたのか。他には、もし宇宙人が着陸を成功させていれば、友好な関係を気づき、文明の発達に役立ってくれたという憶測や、その逆に地球を侵略しようとしたに違いないといった憶測を、画面の中のコメンテーターたちが賢そうに話しあう様子が放送されるのだった。
マハ星では、墜落した宇宙船との通信に成功し、連絡用に取り付けられたカメラから、二人が死んでしまったことを知った。また墜落した宇宙船を介して電波をキャッチし、その惑星でどんな議論がされているかを知った。その議論に、ラマ星人は唖然とした。なぜ、彼らにとって革新的であるはずの様々な技術について報道しないのか。また、次にもし宇宙船が来たとき、同じことを繰り返さないようにするための対策について、議論しないのか。なぜ、何の生産性もないストーリーだけを報道するのか。宇宙船のことだけではない。他の全ての報道でも同じだった。彼らの日常で起きた様々なニュース。それはただのストーリーでしかなく、その報道から生産性を見出すことができなかった。マハ星人は全く不思議に思った。しかしおそらく、電波に乗せて報道していないだけで、彼らのうち一部の異星人たちはやるべきことをやっているのだろうと、マハ星人は考えた。そうでなければ、このメディアの星がこれほど発達している理由を、説明できないではないか。
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