悪の味方
峻一
悪の味方
遥か未来。休日の朝七時に、その男は自宅のリビングにあるソファに座り、テレビをつけた。そして、毎週必ず見ている番組を見るのだ。
番組名は『宇宙海賊ジーザス』。子供染みた番組名だが、宇宙船が行き交うその時代では現実的な内容であり、内容も大人向けの深いものだった。
そしてなにより、その番組における一番の魅力は、主人公ジーザスが悪だということだった。しかし、彼は浅はかな悪ではなかった。彼は物静かであり、頭がよく、自分なりの哲学のようなものを持っていた。つまり、悪でありながら魅力的な人物が主人公だったのだ。
その番組は、ジーザスが様々な星を侵略して回る。それぞれの星の軍隊を、ジーザス率いる悪の軍団、時にはジーザス本人が恐ろしい火力で圧倒し、侵略する。それは道徳的にひどいことだったが、悪目線で見ると案外悪を応援してしまうものなのだ。
今日もジーザスは悪をやってのける。文明が発達したポパ星を襲い、次々とジーザスが領土を侵略する。番組終盤では、その星最強の兵器が出てきて、間一髪の所まで押されたが、ジーザスの頭脳プレーにより、その兵器を無効化する。そして、またひとつ星がジーザスの手に……。
番組が終わり、重々しいエンディング曲が流れる。男は今日も面白かったなあと満足して、いつもここでテレビを消す。そのため、エンディング後の次の言葉を見聞きすることはないのだった。
『この番組はフィクションではありません』という文字。さらに、
「次回予告。戦えジーザス。青い惑星、地球を侵略せよ」
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