花爆弾

 少し先の未来。とある会社がとても変わったものを開発した。見た目は丸々太ったダルマのような形をしていて、鈍い光沢のある合金で作られていた。現代人がこれを見れば、爆薬の詰まった爆弾だと思うことだろう。爆弾であることは確かだが、これは人々を幸せにするために作られた爆弾だった。

 それは花爆弾と名付けられた。これを荒涼とした地に打ち込めば、あたり一面が花で咲き誇るのだ。その壮観さ、斬新さから花爆弾は一躍有名になり、たくさんの花爆弾が世界各地に放たれた。そうして地球はより沢山の花々で覆われ、沢山の人々が癒された。

 新しく斬新な技術が開発されれば、成長するのはあっという間のことだった。すぐに花爆弾から派生し、森爆弾、虹爆弾、山爆弾など、様々なバリエーションが生まれた。それらは辺り一面に木々を生やしたり、虹をかけたり、山を出現させたりした。人類は狂ったように日々新しい爆弾を開発し、それを世界各地に打ちまくった。

 そんなことを続けていたある日、意見の対立が生じた。あの地域には気候上の問題を解決するために森爆弾を打つべきだとか、山爆弾を打つべきだといったものである。しばらくは話し合いが続いていたが、ある日、A国が自分の意見の正しさを証明するために、勝手にB国の領地に山爆弾を打ち込んだ。それに怒ったB国が、A国の海岸線に山爆弾を打ちこんだ。これによってA国の水産業は大ダメージを受けた。

 それからというもの、A国とB国は互いに嫌がらせをするようになっていった。枯木爆弾という陰湿なものが開発され、放たれた。ゴミ爆弾という不潔なものが開発され、放たれた。虫爆弾という気味の悪いものが開発され、放たれた。

 やがて両国間の緊張は最高まで高まり、かつて開発され、冷たい倉庫で眠っていた核爆弾が今、放たれようとしていた。

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