魔法使い
いつもと変わらない平凡なある朝。そんな朝が彼の襲来によって、まったく非凡なものに変わってしまった。都会の街の交差点に、突如として一体の生き物が現れたのだ。見た目は全く人間と同じだが、肌の色は黄緑色で、ステッキを持っていた。彼は自分をダーマ星人と名乗り、魔法使いだと言った。そして、実際に魔法が使えることを証明して見せた。
ダーマ星人がステッキを一つ振ると天気は晴れから雨になり、もう一回振ると晴れに戻った。ステッキの上に乗って空を自由に飛び回ったり、宙から水を出現させたり、その様子を茫然と眺めていた男をどこかへテレポートさせたりした。ダーマ星人は一躍時の人、いや時の宇宙人となり、テレビに出演することになった。
陽気な司会の男と落ち着いたダーマ星人は並んで座ってやり取りする。
「あなたは魔法が使えるんですね。何か見せてくださいよ」
「まず、あなたたちの言語を聞き取り、話せているのも魔法の力なんですがね。まあ、追加で何かしましょう。そら」
ダーマ星人は司会の男の髪をアフロにしてしまった。ギャラリーから笑いが起こる。
「本当に素晴らしいですね。どんな原理なんですか」
「それはわかりません。実際は何か原理というものは存在するのでしょうが、私にはまったくわかりません。ただ、使い方がわかるのです。腕を動かそうと思えば動かせるように、魔法を使おうと思えば、使えるのです」
司会の男は大げさに驚いたようなリアクションをとった。それに対し、ダーマ星人は不愉快そうな反応を見せた。
「煩わしいですね。あなたたち地球人だって、魔法を使っているじゃないですか」
「私たちは魔法を使えませんよ」
「嘘はよくありません。遠くの人と板を返して話をしたり、鉄の塊を操って便利な移動手段としたりとか、充分魔法を使いこなしているじゃありませんか」
司会の男は困ったようにはにかんだ。
「それは科学と言って、魔法ではありません。ちゃんとした原理があるのです」
「どのような原理です」
「それはわかりません。ただ、私たちは使い方を知っているのです」
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