ひとつ
この空間は、どこでもない。厳密に言うと、どこかではあるのだが、それは人の感覚では認識できない空間だった。その一点に、ひとつの球体がある。これは果てしないほど大きく、また別の観点から見れば、とても小さなものでもあった。この物体もまた、人の感覚からは到底理解することができない存在だった。
その球体の中には、恐るべき量の、人がすべてと呼ぶようなものが詰まっていた。その量はあまりにも膨大で、どんな言葉をもってしても表すことはできなかった。
その球体は、無限に遡った過去から存在し続け、また、無限に過ぎていく時間の中で、静止し続けるはずだった。しかしそれは、無秩序に発生したそよ風のように小さい力によって、爆発した。一瞬で球体はバラバラにはじけ飛び、すべての均衡が崩れ、空間が形作られた。その動きはインクがコップの中で広がるように、力なかった。それは宇宙だった。
結合から解放されたすべては、あまりにも小さすぎる宇宙の中で蠢き続ける。しかし、この現象もまた、宇宙の外から見れば、たったひとつのものに過ぎない。戦争の最中、機関銃で打ち抜かれた兵士も、機関銃を放つ兵士も、機関銃から放たれた弾丸も、機関銃そのものも。蟻も、月も、銀河群できらめく無数の星々も。すべて、ひとつに過ぎないのだった。
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