満足

「やっぱり、食べ物は天然由来のものに限る。量だけを重視していては、健康にはなれぬ」

「ああ、まったくそうだ」

 彼らは人工的なものが入っていない食材に満足する。


「やっぱり、育て方から違ければ、味も違ってくる。多少高くても、自然のものを食べて育った牛肉に限る」

「そうだな」

 彼らは健康的に育てられた牛の新鮮な肉感に満足する。


「長年による追跡研究の結果、人工的なものが入っていない餌を食べて育った牛の肉を食べ続けた人々、天然のものだけの餌を食べて育った牛の肉をそれぞれ食べ続けた人々の間には、仕事の能力に差があることが明らかになりました。ですから、多少のコストはかかっても、社内食堂の肉はすべて、天然由来の餌を食べて育ったものにするべきです。長い目で見れば、約三十パーセント以上の仕事効率向上が見込まれ……」

「まったくその通りだ」

 とある大企業の社長は口の中で呟いた。彼は会社のさらなる拡大の予感に満足する。

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